Calling 第21話 玉子焼き -2-
――二十分後。
合宿で使用したボールやアイシング用品、麦茶用の水飲みタンクやその他の荷物をバスから降ろし、
部室に運び終えると、今日はこれで解散という事になった。
「あ、いた、いたー!」
そして俺とシゲが部室を出て帰ろうとしていると、織田ちゃんが小走りでやって来た。
「ねぇ、イズミと高津君、もうお昼ご飯食べた?」
「いや、まだ。てゆーか、今日はもう解散だから帰ろうとしてたところ」
「あ、そーなの? じゃー……これ、いらないかなぁー?」
織田ちゃんはそう言うと俺とシゲの前にアルミホイルに包まれた何かを差し出した。
「お裾分けに来たんだけどなー?」
「お、マジで?」
「お昼ご飯には全然足りないだろうけど」
「いや、それでも嬉しいよ。ありがと」
「口に合うといいけど。じゃーね♪」
織田ちゃんはそう言うとバイバイと手を振ってまた調理室の方へと戻って行った。
俺とシゲはおなかのすき具合もピークに達していた所為もあり、
学食で織田ちゃんから貰った“お裾分け”を食べて帰る事にした。
◆ ◆ ◆
「っ!?」
アルミホイルの中には梅とおかかのおむすびが一つずつと玉子焼きが二切れ入っていた。
包みの大きさ的に多分、おむすびが二つくらい入っているんだろうなという事は
予測できたけれど、まさか玉子焼きも入っているとは思わなかった。
(この玉子焼きって……さっき小峯が作ってたやつだよな?)
「んー、うまいっ」
シゲはさっそく玉子焼きに手をつけた。
でも、俺は先におむすびから。
だって、小峯が作った玉子焼きだぞ? 先に食べてしまうなんてもったいない。
「大地、玉子焼き食べないのか?」
すると、既に完食しかかっているシゲが楽しみに取っておいた俺の玉子焼きに視線を移した。
「バカ、食べるに決まってんだろっ」
俺は慌てて玉子焼きを口に放り込んだ。
(……美味しい)
正直、今まで玉子焼きは自分の母親のが一番だと思っていた。
しかし、小峯の玉子焼きは砂糖が入っている甘いやつで、でも甘すぎずちゃんと卵の味もしていて
いくらでも食べられそうな程、俺の中での『美味しい玉子焼き』一二を争う味だった。