Calling 第24話 行方不明 -1-
「悪ぃー、ボール取ってー……って、あれ?」
新学期初日、俺はまた性懲りもなく女子のテニスコートにサッカーボールを蹴り込んでいた。
しかし、この日もボールを拾ってくれたのは小峯じゃなかった。
……運が悪い。
サッカーボールを拾ってくれたのは俺と同じ三年で隣のクラスの青田さんだった。
「……」
ムスッとした顔で俺にボールを投げると無言でくるりと背を向けた。
「サ、サンキュー」
俺がそう言っても青田さんは無反応だった。
(うっわー、感じ悪っ)
青田さんていつもこうなんだよなー。
何を考えているのか全然わからないし、俺の事が嫌いなのか一年の時も同じクラスだったのに
まったく話し掛けてくる事もなかったし。
だから俺も彼女には話し掛けなかったけど。
(今日はついてないなー)
「鈴ちゃんじゃなくて残念だったねー?」
そして、溜め息をつきながらグラウンドに戻ろうと踵を上げると、
目の前に織田ちゃんが悪戯っぽい笑顔を浮かべながら立っていた。
「鈴ちゃんなら今日はいないわよ」
「え? 休み?」
そう言われてみれば小峯の姿が見当たらない。
キョロキョロと周りを見回してみてもどこにもいなかった。
「さっき、岩井君にも訊いてみたんだけど学校には来てたって。
部活を休むにしても今まではちゃんと連絡してくれたんだけどねー、なんか行方不明」
「ふーん……」
それから俺はグラウンドに戻ってからも小峯の事が気になっていた。
織田ちゃんも心配そうな顔をしていたし。
◆ ◆ ◆
部活が終わって部室棟に向かっていると女子テニス部と一緒になった。
「織田ちゃん、小峯来た?」
「ううん、結局来なかった」
織田ちゃんの答えに俺はちょっと胸騒ぎがした。
特に根拠があるわけじゃないけれど嫌な予感がする。
そして部室で制服に着替えた後、俺はシゲに先に帰ってもらった。
小峯の携帯にかけてみるつもりだからだ。
シゲが部室を出て行った後、カバンから携帯を出すと、部活中に着信があったらしく
不在着信のアイコンが出ていた。
(ん?)
着信履歴を見ると小峯からだった。
俺はすぐに小峯の携帯に掛け直した。
『……もしもし』
数回コール音がした後、小さな声が聞こえた。
「小峯?」
『はい……』
(え? 泣いてる?)
電話の向こうの小峯の声は震えていた。
「小峯? どうしたんだ?」
『先輩……助けてください……』
「えっ?」
◆ ◆ ◆
「小峯っ!」
電話を切った後、俺はすぐに職員室に行って予備の鍵で物品倉庫のドアを先生に開けてもらった。
すると小峯は床に座り込んで泣いていた。
「先輩……っ」
小峯は俺の顔を見た途端、安心したのか子供みたいに泣き出した。
(よっぽど怖かったんだろうな……)
いきなりこんな真っ暗な所に長時間閉じ込められ、助けを呼んでも来ないし、
かと言って出るに出られず、すごく不安だったのだろう。
俺と一緒に助けに来た先生曰く、警備員のおっさんが見回りに来た際、
物品倉庫の電気を誰かが消し忘れたんだと思って、ろくに確認もしないで鍵を閉めてしまい、
それで小峯が閉じ込められたんだろうという事だった。
実は以前にもその警備員のおっさんは同じ様な事をやらかしたらしい。
「もう大丈夫だから」
俺があやす様に小峯の背中を擦りながら抱きしめると、ようやく少しだけ落ち着いてコクンと頷いた。