Calling 第32話 サイン -6-

 

 

「あ、宮田先輩にパス回っ……て、あれ?」

高津先輩のスローインで宮田先輩にボールが回ってきた。

しかし、そのボールはすぐに和泉沢先輩にパスが出された。

朋ちゃんが隣で不思議そうな顔をしている。

 

そして次の瞬間、彼がシュートを打った――。

 

和泉沢先輩が打ったシュートは見事にゴールネットを揺らした。

 

(……決まったっ!?)

 

沸きあがる歓声、周りの人達も立ち上がって喜んでいる。

 

「鈴ちゃんっ、和泉沢先輩やったね♪」

「うんっ」

私と朋ちゃんがハイタッチをしていると和泉沢先輩と目が合った。

すると、先輩は右手で軽く前髪を掻き上げ、親指で鼻の頭を撫でた。

 

(……あ)

 

“シュート決めたら、鈴にだけわかるサイン送るから”

 

昨日、先輩が私にそう言った。

私と先輩だけにわかるサイン。

 

私は小さく手を振って応えた。

 

 

……ピッ……、

 

しかし、審判のホイッスルが鳴り、コートにいる先輩達からも笑顔が消えて

表情が険しくなった。

 

「え……何?」

「?」

私と朋ちゃんもよくわからない。

ただ、ざわつき始めた周囲から落胆の声とともに“オフサイド”と言う言葉が聞こえてきた。

 

「朋ちゃん、オフサイドだって」

「えー……」

私と朋ちゃんもがっかりした。

 

(せっかく先輩がシュートを決めたのに……)

 

オフサイドを取られた和泉沢先輩は微妙な位置にいた。

しかし、判定が覆ることはなく、相手チームの間接フリーキックになった。

 

「でも、まだ時間あるし、大丈夫っ! ねっ? だから、応援しよう?」

朋ちゃんは私と違って前向きだ。

 

「……うん、そうだね!」

 

コートの中では既にプレイが再開されていた。

 

「先輩ーっ! 頑張ってーーーーっ!!」

試合も終了間近になって興奮に包まれたスタジアムの中に響く大歓声。

私の声など彼に聞こえるはずもない。

それでも私は必死で叫んだ。

 

悔しそうな顔を浮かべて、ボールを追っている彼に向かって一生懸命に叫んだ――。

 

だけどオフサイドで精神的ダメージが大きかったからか、先輩達のチームは

相手チームの選手が放った間接フリーキックに上手く立ち回れていなかった。

そしてあっさりとゴールを許してしまい、それがそのまま決勝点になった。

残り時間が僅かだったし、焦っていたのもあるだろう。

 

そうしてゴールが決まった三秒後、主審のホイッスルが試合終了を告げた――。

 

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