Calling 第36話 イライラモヤモヤ -2-
「そう言う高津君だって、モヤモヤしてたじゃない」
「う……」
すると今度は織田ちゃんの言った事にシゲが言葉を詰まらせた。
「高津君も鈴ちゃんと付き合ってた時に、駅で別れてから仲良さそうに
山手線のホームに歩いていくイズミと鈴ちゃんの後姿を見ながら
『鈴、大丈夫かなぁ?』って毎日言ってたじゃない」
(え……)
シゲがそんな事を思っていたなんて全然知らなかった。
「イズミに鈴ちゃんを取られちゃうんじゃないかって心配してたよね?」
「……て、てか、あの時一緒に帰ってくれって言ってきたのシゲじゃんか」
「いや、そうなんだけど……だからあの後、しばらくして俺、
おまえに明日から二人で帰るからって電話したじゃん」
「えーっ、アレってそういう裏があったのか?」
「まぁ、な。……つーか、俺はホントにおまえに取られたけど」
「……」
何も言えなかった。
(そうか……だからシゲは別れた時に鈴の好きな奴が俺だって見抜いたのか)
「それより、シゲ、おまえなんでここにいるんだ?」
「あー、おまえに日本史の教科書借りようと思って来たんだけど、
そーいや鈴とデート中だったなーて思い出して、そいで織田ちゃんに
借りようとしてたらおまえが超不機嫌モードで帰って来たんだよ」
「あ、そ」
(“超不機嫌モード”ってそんなに顔に出てたのかな?)
「という訳で日本史の教科書貸してくれ。大地んトコはもう日本史の授業終わったんだろ?」
「あぁ、三時限目だった。……あいよ」
机の中から日本史の教科書を出してシゲに渡すとちょうど予鈴がなった。
「サンキュー、“モヤモヤ君”♪」
そしてシゲは人を“モヤモヤ君”呼ばわりして教室を出て行った。
(……何が“モヤモヤ君”だ。“モジモジ君”みたいな言い方しやがって)
……と、そんな事を思っていると、
「イズミ、余計なおせっかいかもだけど、鈴ちゃんは平気で浮気なんて出来る子じゃないよ?」
織田ちゃんが俺に視線を向けていた。
「高津君と付き合ってる時も別れる直前はね、すごく辛そうな顔してたの。
あの時は、どうしてかわからなかったけど……今にして思えば、あれって多分、
イズミの事が好きなのに高津君と付き合ってるのが苦しかったんだと思うんだよね」
「……」
(そうか……、織田ちゃんは鈴の事を近くで見ていた……)
「だから、やっぱり今回の事はイズミの誤解だと思うよ?
鈴ちゃんが何も言わなかったのは、多分、イズミが怒ってるのを見て怖くて
何も言えなかったんじゃないかな?」
「……怖くて?」
そりゃあ、確かにさっきはものすごく怒っていた。
昨日の事も鈴に訊けばすぐに答えると思っていた。
だけど、鈴は何も答えなかった。
……いや、答えられなかった?
「鈴ちゃんの性格、忘れたの? 高津君が告った時も怖くて断れなかったくらいなのよ?」
「あ……」
「自分が思っている以上に“怖い顔”を鈴ちゃんに見せちゃってたのかもよ?」
「う……」
織田ちゃんの言葉がずっしりと俺の心に圧し掛かった。
俺はどうやら鈴に“悪い一面”を見せてしまったらしい――。