キューピッド・ゴブリン −19−

 

 

――それから更に一週間が過ぎ、

レイアがゲームに入ってきた。

 

しかし、レイアがログインした途端、

マースさんがチャットルームに連れて行った。

 

(レイアと話したかったのに……)

 

そして案の定、マースさんはチャットルームに鍵をかけた。

 

「まただ……」

 

 

俺は諦めてソロでレベル上げをしようと

『ガルディア砂丘』へ向かった。

レイアがログインして来なかった間、

俺はずっとレベル上げばかりやっていた。

そのおかげでレベルも81になり、やっとレベル83のレイアに近づいた。

 

これでレイアと一緒にレベリングパーティが出来る。

 

そう思っていたのに……。

 

 

 

 

そうして、『ガルディア砂丘』でサソリを狩ること30分。

順調に一匹ずつ狩っていると、運悪く目の前に新たにサソリがPOPした。

 

「げ」

そう言った時には既に遅く、POPしたサソリがリンクして、

俺は二匹同時に相手をするハメになった。

 

ここは一匹だけでギリギリなのにー。

 

「あー、やべぇー」

攻撃力の高いサソリに見る見る俺のキャラクターのHPは削られていき、

もう逃げるしかないのか? と、思ったその時……

 

俺のHPが回復した。

 

どこからか治癒魔法がかけられたのだ。

 

「助かったー」

 

そして、防御力アップと攻撃力アップ、

攻撃速度アップや命中率アップの魔法が次々にかけられた。

画面にステータスアップのアイコンがいっぱい並んだ。

 

おかげで俺は無事にサソリを二匹とも倒せた。

 

画面をスクロールして魔法をかけてくれた人を捜していると

そこには髪の長い女の子の姿があった。

 

「あ……レイア……ッ」

 

[耳打ち] Orli >> ありがと 助かった^^

 

レイアはいつの間にかチャットルームから出て、

俺がいる『ガルディア砂丘』に来ていた。

 

[耳打ち] Raia >> いえいえ^^

 

だけど、俺を助けれてくれたのは実はレイアじゃなかった。

 

よく見るとそれはレイアと同じフェイスタイプで

同じ髪型のキャラクターだった。

ただ髪の色がちょっと違う。

俺と同じブルーシルバーだ。

それにギルドメンバーの一覧を見てみるとレイアはまだ

チャットルームにいた。

今度はショウさんと二人で話しているみたいだ。

 

ルーム名の横にまた鍵マークが付いている。

 

「あ?」

 

(なーんだ、レイアじゃなかったのか……)

 

(……がっかり)

 

[耳打ち] Raia >> レベルいくつですか?

 

しかも俺を助けてくれた子は名前まで似ていた。

 

(“Raia”?)

 

(“Reia”じゃなくて?)

 

[耳打ち] Orli >> 81

[耳打ち] Raia >> レベル上げ?

[耳打ち] Orli >> うん

[耳打ち] Raia >> じゃあ、よかったら一緒にレベル上げしませんか? 私も81なんで^^

[耳打ち] Orli >> うん^^

 

がっかりしたけれど、俺はその子と一緒にレベル上げをする事にした。

せっかくこうして出会えた訳だし。

 

 

その子は“ライア”といって、とてもいい子だった。

一緒にサソリを狩ってる時もお互いのギルドの人達の事や

ソロの狩り場の穴場とか景色が綺麗な場所とかいろんな事を

話しながら狩った。

いつもはただ一人で黙々とモンスターを叩くだけの作業だった

レベル上げが今日は楽しい。

 

そして、ライアも俺と同じ高校一年生なんだという話になり、

「へぇー、そーなんだー」なんて事を言っていると

サソリが5匹も大リンクしていた。

 

[Party] Orli >> うわっ 5匹って;

[Party] Raia >> やばい テレポートするね

 

ライアは素早く詠唱を始めた。

 

しかし、どんなに俺が頑張ってもサソリ5匹を惹きつけてはおけない。

テレポート魔法の詠唱時間は長く、詠唱中にライアも攻撃されて

途中で中断されてしまった。

俺を死なせないように治癒魔法をかけてくれたりしながら

何度もテレポートしようとまた詠唱を始めるけれど

やっぱりサソリの攻撃で逃げることも出来ずにいた。

 

……で、そんな事を繰り返すこと数回。

俺とライアのパーティはとうとうサソリ5匹に倒された。

 

[Party] Orli >> あははははー 全滅^^

[Party] Raia >> ごめーん 私が後ろにPOPしたの気付かずに

目の前のサソリに殴りかかったから;;

[Party] Orli >> いやいや 俺がもっと上手く立ち回れればよかったんだけど;

[Party] Raia >> てか、どうしよう? このまま誰かが通りかかるの待つ?

[Party] Orli >> うーん、俺はもうそろそろ落ちるから このまま復活ポイントに帰ろうかな

[Party] Raia >> じゃあ 私もそうする^^

 

俺とライアはパーティを組んだままお互い復活ポイントに戻った。

俺は『ガルディア砂丘』に一番近い町、ライアはそこから少し離れた町に帰った。

 

[Party] Raia >> 今日は楽しかった ありがとう^^

[Party] Orli >> こっちこそ ありがとう^^ 楽しかったよ

[Party] Raia >> オーリー よかったらフレンドになって貰えるかな?

[Party] Orli >> うん もちろん^^

 

名前も姿もレイアとよく似た女の子。

でも、中身はまったくの別人。

 

また一人、俺のフレンドリストに名前が増えた――。

 

HOME
INDEX
BACK
NEXT