キューピッド・ゴブリン −7−

 

 

―――夜、ゲームにログインすると目の前にレイアがいた。

 

レイアは俺に気が付くとエモーションで手を振ってくれた。

そして俺も手を振り返しながら、ふと思った。

 

レイアって、成瀬さんに似てるなぁ。

 

例えば髪の色は違うけれどストレートの長い髪とか、

可愛らしい顔とか、背が低いとことか。

 

レイアのキャラクターは女の子のSサイズだからか、

昨日、ギルドメンバーの他の女の子キャラと比べても小さかった。

ちなみに俺のキャラクターはLサイズ。

レイアと並ぶとちょうど俺と成瀬さんと同じくらいの身長差だ。

唯一、成瀬さんと違う点と言えば、人見知りじゃない事ぐらいだろうか。

 

[耳打ち] Reia >> オーリー、インベントリに空きある?

[耳打ち] Orli >> うん、あるよ

[耳打ち] Reia >> これあげる

 

レイアはそう言うと俺に何かをトレードで渡してくれた。

 

[耳打ち] Reia >> 羊のステーキ 食べるとHPとSTRが上がる効果があるから(´∀`)

[耳打ち] Orli >> ありがと^^ 羊しばいてたの?

[耳打ち] Reia >> うん クエストで30匹倒せって言われて 叩いてたら

いっぱい羊肉をドロップしたから作ったの(´∀`)

[耳打ち] Orli >> あはは そうなんだ

[耳打ち] Reia >> いらなかったら 売ってね それじゃ またねー(´∀`)

[耳打ち] Orli >> うん また^^ ありがとねー

 

お互いエモーションでバイバイと手を振り、レイアは白馬に乗って町を出た。

 

 

その後、さっそく俺はレイアから貰った『羊のステーキ』を食べて見た。

レイアが言っていた通りHPとSTRが上がり、モンスターを叩いてみると

攻撃力が上がっているから、いつもより撲滅スピードが速かった。

 

「うほほ♪こりゃいいわ。」

俺はパソコンの前で思わず笑った。

これならソロで倒すには少し辛いモンスターも楽に倒せそうだ。

 

 

そして、しばらくゴブリンを倒していると綺麗な石をドロップした。

 

『七色の水晶』

 

なんだこりゃ?

 

 

『羊のステーキ』の食事効果が切れたところで俺は町に戻り、

オークションで『七色の水晶』の値段を見てみた。

なかなかの値段だ。

さらにログアウトしてwikiで『七色の水晶』の事を調べてみると、

“ゴブリンが稀にドロップする宝石”と、あった。

 

へー、だからオークションでわりと高い値段がついていたのかー。

これで何か作れるのかな?

 

俺はレイアにお礼も兼ねて何かプレゼントがしたかった。

合成レシピの中から『七色の水晶』を使ったレシピを検索すると

彫金の中に『虹のピアス』というのがあった。

装備効果は特になし。

 

“特になし”・・・っ!?

 

しかし、備考欄に“隠し効果で幸運がアップ?”とあった。

 

なんだこの最後の“?”は。

まぁ、あくまで隠し効果だからわからないって事か。

 

特に変わったアイテムでもないし、レイアからしてみれば

たいした物でもないのかもしれない。

それでも俺はこの『虹のピアス』を作ってみる事にした。

合成するにはもう少しスキルを上げないとダメだけど、

レイアがこの『虹のピアス』をつけた姿を想像しながら

俺はパソコンの電源を切った。

 

翌日から、俺は少しずつ彫金スキルを上げ始めた。

 

 

[耳打ち] Reia >> 何作ってるの?(´∀`)

 

スキル上げを始めて一週間。

レベル上げもそっちのけで合成しているとレイアが話しかけてきた。

俺のキャラの前にはレイアが立っていた。

 

[耳打ち] Orli >> 彫金のスキル上げ^^

[耳打ち] Reia >> 最近、町にいる事が多いけどずっとやってるの?

[耳打ち] Orli >> うん^^ ちょっと作りたいものがあって

[耳打ち] Reia >> 何?(´∀`)

[耳打ち] Orli >> 内緒ー^^

[耳打ち] Reia >> あ、さては 女の子に指輪でもプレゼントするつもりだなー?

 

ギクッ!?

 

[耳打ち] Orli >> ちがう、ちがう^^

 

レイア・・・意外と鋭い?

 

こういう時、ゲームでよかったと思う。

本人が目の前にいたら、俺はきっと隠しきれないからだ。

 

[耳打ち] Orli >> 鍛冶で作りたい片手剣があって、その材料を作るのに

彫金スキルがいるから

[耳打ち] Reia >> あー、なるほどー(´∀`)

 

レイアは上手く誤魔化されたらしく、納得すると

エモーションで応援してくれた。

だけど次の瞬間、レイアの耳のあたりがキラキラと光っている事に気が付いた。

 

「んっ?」

俺は思わずパソコンのモニターに顔を近づけた。

 

この光り具合は・・・

 

『虹のピアス』ではなさそうだけど、高そうなピアスだ。

 

こんなの今まで装備してなかったよな?

 

[耳打ち] Orli >> レイア、新しいピアス?

[耳打ち] Reia >> うん 昨日、マースさんが作ってくれたの(´∀`)

[耳打ち] Orli >> へー、どんなピアス?

[耳打ち] Reia >> ダイヤのピアスだよ^^

 

『ダイヤのピアス』、それはピアスの中で一番高い物だ。

しかも、買ったんじゃなくて“作った”とな。

それを作るにはスキルも相当高くなくちゃいけない。

 

「・・・やーめた。」

なんだかバカバカしくなった。

いくら俺が頑張って彫金スキルを上げて作ったところで、

『ダイヤのピアス』に比べたら『虹のピアス』なんておもちゃだ。

 

レイアが喜ぶはずがない。

 

俺は『七色の水晶』をオークションに出品してログアウトした。

 

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