HERO −2−
定期入れを届けたおかげで遅刻ギリギリになった私は
ダッシュで学校に向かい、教室に飛び込んだ。
「おはよう、璃桜。」
とりあえず遅刻しないで済んだと安心していると、
私の隣の席に座っている栗田アキが声を掛けてきた。
アキとは高校に入ってからの付き合いだけど、
なぜか波長が合うからか、今では親友と呼べる仲だ。
「・・・おはよう。」
まだ息が整っていない私はゼェゼェ言いながらアキに軽く手を振った。
「ねぇ、璃桜。明日、合コン来ない?」
「へ?ご、合コン・・・?」
朝っぱらから何を言い出すのかと思えば・・・。
「・・・パス。」
「えー、なんでー?」
なんでと言われれば、理由は一つしかない。
窪田くんが好きだから。
好きな人がいるのに合コンに行くのは・・・ちょっとね・・・。
「璃桜、毎回誘っても来ないし・・・一回くらい来てよー?」
「えー。」
「イケメン来るよ?」
いや・・・そーゆー問題じゃ・・・。
「今回、いつもと違うメンバー連れてくるように言われてるのよー。」
「誰によっ?」
「男子チームの幹事。」
「あー、アキの従兄弟?」
「そそ。」
アキには同い年の従兄弟の男の子がいる。
そして毎回、その従兄弟くんと組んで合コンをしているのだ。
「今回どうしてもあと一人新しい子を連れて来いって言うのよー。」
「えー、だからって、なんで私なの?」
「だってもう璃桜しかいないんだもん。」
「うーん・・・。」
「お願いっ!璃桜っ。」
結局、この後私はアキに拝み倒され続け、根負けし、
合コンに行くハメになった。
個室でカラオケもできるお店で4対4の合コン。
あまり気が進まないけど、ただみんなで遊びに行くって
考えればいっか。
―――翌日、土曜日。
午後7時に女の子だけで待ち合わせ。
男の子達とは直接お店で待ち合わせをしている。
アキになるべく可愛い格好をして来いと言われた私は、
ミニスカートで行った。
フレアで淡い水色の結構お気に入りのモノだったりする。
今日のメンバーは女の子の方は、アキと私、隣のクラスの柚木さん、
後はその柚木さんの友達。
男の子の方はアキの従兄弟くんとその友達3人。
待ち合わせ場所にはすでにみんな来ていた。
・・・早っ!?
まだ10分前だというのに・・・
まぁ、そーゆー私も早いけど・・・。
4人揃った私達は男の子達が待っているお店に向かって歩き始めた。
お店に入ると男の子達の方もすでに4人揃っていた。
そして、その中の一人によく知った顔があった。
あ・・・
「あ・・・。」
その男の子も私と目が合うと小さく声をあげ、驚いていた。
窪田遼太郎くんだった。
“ヒーロー合コンへ行くの巻”・・・まぁ、ヒーローも所詮は
“普通の男の子”だった・・・と。
「リョウ、知ってる子?」
そう言って私の目の前に座っている男の子が、
私と窪田くんの顔を交互に見た。
「・・・いや・・・、知ってるってゆーか・・・
毎朝、乗る電車一緒なだけなんだけど・・・。」
「へぇー、そーだったんだ・・・てか、とりあえず
自己紹介からしようか。俺は相葉貴教、
ちなみにアキの従兄弟。よろしくねー。」
目の前に座っている男の子はアキの従兄弟くんだった。
なんだかちょっとチャラチャラしてるっぽい人だ。
男の子達の自己紹介が終わって、アキ達が自己紹介した後、
最後に私が「坂本璃桜です。よろしくね。」と自己紹介すると、
「えっ!?」と、またも窪田くんが驚いた。
「・・・?」
なんだろう・・・?
私が不思議そうな顔をしていると
「坂本さんて・・・もしかして・・・昨日、俺の定期入れ届けてくれた人?」
と言った。
「あ・・・うん。」
確かに昨日、学校に届けに行った。
窪田くんの口からその事が出たという事は、
無事に窪田くんの手に戻ったという事か。
「それって昨日、お前の定期入れをわざわざ学校まで
届けに来てくれたって担任が言ってた子?」
アキの従兄弟くん・・・相葉くんもその事を知っているみたいだ。
「うん、学校だけは制服でわかったらしくて教えてもらったんだけど・・・
後は名前だけしか聞かなかったみたいだし、顔も学年もわかんないし、
だから、今日ちょうどお前の従兄弟にでも、その“坂本璃桜”さんの事、
聞いてみようかと思ってたんだ。」
「おぉ、じゃ、まさに恩人に出会えたワケだ?」
「恩人だなんて大袈裟だよー。」
私はクスクスと笑った。
すると窪田くんは意外にも「いや、恩人だよ。」と言った。
「あの定期入れ結構気に入ってるから、
落としたのがわかった時はマジでヘコんだし。」
「そうだったんだ。」
「うん、ホント助かったよ。ありがとう。」
窪田くんはそう言うと私ににっこりと笑ってくれた。
私はその笑顔にキュンとした。
初めて私だけに向けられた笑顔・・・。
でも、その笑顔はすぐに別の女の子にも向けられた。
窪田くんは基本的に愛想は悪くない。
だから、アキや柚木さん達が話しかければ
普通に笑顔でしゃべっている。
そして私も相葉くん達と話していたから、結局、
窪田くんとまともに会話できたのはそれだけだった。
もっと窪田くんと話したかったなぁ・・・。
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