HERO −告白合戦・1−
璃桜と付き合う事になった花火大会から数日後―――。
「リョウッ!?璃桜ちゃんっ!?」
璃桜と二人でファーストフードでお茶していると
聞き覚えのある声に呼ばれた。
俺がその声に振り返ると・・・
「・・・タカ。」
タカだった・・・。
しかも隣には栗田さんまでいる。
「なんでおまえと璃桜ちゃんが二人でいるんだよ?」
俺と璃桜の顔を交互に見ながら、タカは不思議そうな顔で言った。
そりゃそうか・・・だって、こいつにはまだ璃桜と付き合う事になったの
話していないからな。
タカも璃桜の事を狙っていたし、本当はちゃんと
言ったほうがいいんだろうとは思う。
思うけどわざわざ俺から電話して言うのもなんか嫌味かな・・・と思って
今度の登校日にでも言うつもりだった。
「なんでって・・・俺、璃桜と付き合う事になったから。」
「は?」
タカは口を開けたまま固まった。
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
そして沈黙する俺と璃桜と栗田さん。
「嘘だろ?なんだよ、それっ。」
タカは顔を強張らせると「璃桜ちゃん、ホントなの?」
と、璃桜に視線を向けた。
すると璃桜は無言でコクンと頷いた。
「・・・。」
それを聞いたタカは少しの間黙り込み、
「璃桜ちゃん、ちょっと・・・。」
と、璃桜の腕を掴み、スタスタと歩き始めた。
「おいっ!タカ!」
俺が慌てて止めようとすると栗田さんがそれを制した。
「大丈夫、ここで待ってようよ。」
何を根拠に“大丈夫”と言えるのかわからないけれど、
俺は栗田さんの言うとおり、おとなしく二人を待つことにした。
タカは璃桜を少し離れたテーブルに連れて行き、
向かい合って座るとさっそくなにやら話し始めた。
もちろん、俺がいるところからは会話の内容は
まったく聞こえない。
一体何を話してるんだ?
俺はそればかりが気になった。
そして、10分もしないうちに璃桜だけが戻ってきた。
タカはというと、頬杖をついてそっぽを向いている。
「話は終わった?」
戻ってきた璃桜に栗田さんがそう聞くと
「うん。」
と、璃桜は少しだけ笑った。
「じゃあ、デートの続きをごゆっくりー。」
栗田さんはカタンッと小さく音を立ててイスから立ち上がると
俺と璃桜にひらんひらんと手を振ってタカの方へ歩いていった。
「・・・出ようか。」
別にこのままここにいてもいいけれど
なんとなく居辛かった。
「うん。」
そしてそれは璃桜も同じなのかすぐに返事をした。
それから、璃桜は何もなかったように俺と話をしていた。
タカと何を話したのか言わないし、
俺も敢えて聞かなかった。
ホントはすごく気になるけど、璃桜も何も言わないって事は
たいした話じゃなかったのかな?
「璃桜・・・。」
「ん?」
俺が名前を呼ぶと璃桜は可愛らしい笑みを浮かべながら
俺の顔を見上げた。
「あのさ・・・」
「?」
「・・・いや、なんでもない。」
タカと何を話したのか、何を言われたのか
すごく気になったけど、やっぱり聞く勇気が出なかった。
「???」
そんな俺の顔を璃桜は不思議そうな顔をしながらじっと見つめていた。
―――数日後。
この日は俺達の学校の登校日。
朝、教室に入るとタカが沈んだ顔で頬杖をついていた。
「おいっすー。」
「・・・。」
とりあえずいつも通り、声を掛けた俺に対し、
タカは無言で顔を向けるだけだった。
こーゆー時、つくづくこいつの前の席じゃなきゃいいのに・・・と思う。
だって、ほらっ。
後ろから感じる視線が痛すぎる・・・っ!
「・・・。」
「・・・。」
あぁ・・・もう耐えられない・・・。
後ろから感じる鋭すぎる視線に俺は我慢の限界を迎えた。
俺が後ろを振り返り、タカの顔をじっと見つめると
タカはいかにも何か言いたそうな顔で俺を見つめていた。
「・・・。」
「・・・あのさ・・・タカ、璃桜の事なんだけど・・・」
「・・・。」
頬杖をついたままタカは俺の口から出る次の言葉を待っていた。
「おまえには悪いと思ってるよ。けど、俺・・・ずっと璃桜の事、
好きだったんだ。
だから、どうしてもおまえに取られたくなかった。」
「随分とハッキリ言ってくれるな。」
「・・・悪ぃ。」
「まぁ、おまえのそーゆートコ嫌いじゃねぇけど。」
「そりゃ、どうも。」
「・・・。」
「・・・。」
そして、しばしの沈黙。
「けど、どの道俺は璃桜ちゃんにフラれてたけどな。」
俺がこの間の事を聞いてみようか、どうしようかと思っていると
タカが意外な事を口にした。
「どういう事だよ?」
「この間、ファーストフードでおまえらにバッタリ会って
璃桜ちゃんと二人で話した時にさ、
俺がリョウよりも先に告ればよかったって言ったら
璃桜ちゃんなんて言ったと思う?」
「さぁ?」
「璃桜ちゃんもおまえの事、ずっと好きだったんだとさ。」
「へ?」
「高校に入って毎朝電車で会うおまえの事が気になるようになって、
ここ1年くらいずっとおまえに片想いしてたって。
だから、もし俺に告られてても俺の気持ちに応える事はできなかったって。」
「璃桜がそう言ったのか?」
「あぁ。」
璃桜も俺の事を・・・?
「そんなキッパリ言われるとさすがにヘコむよなぁ・・・。」
タカはそう言うと机に顔を伏せた。
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