HERO −告白合戦・2−

 

 

―――翌日。

 

「璃桜。」

昼過ぎ、デートの待ち合わせ場所に行くと、

彼女の方が先に来ていた。

俺が手を振りながら名前を呼ぶと

璃桜は嬉しそうに笑って手を振り返してくれた。

ちなみに今日は映画デート。

 

映画館に入ると、今話題の恋愛映画だからか

かなりの人で混んでいた。

狭くもなく広くもないカップルシートは

ちょうどいい広さの二人だけの空間だ。

 

「はい、璃桜。」

冷たいオレンジジュースが入った紙コップを

璃桜に手渡すと「ありがと。」

と、璃桜はにっこり笑った。

 

映画のストーリーは勢いだけで付き合い始めた二人が

実は両想いだったけど、それを口にする事が出来ずに別れてしまう話。

・・・て、まぁ最後はちゃんとハッピーエンドなワケだけど。

 

映画の中の主人公達は純粋でものすごくじれったくて

お互いの想いをなかなか口にしない。

そしてそれが元でお互いの事が信じられなくなって

離れていってしまう・・・。

 

そこで俺はふと、ある思いが頭を過ぎった。

 

俺もまだ璃桜にちゃんと本当の気持ちを伝えていない・・・。

ちゃんと“好き”って言葉を璃桜に言っていない。

 

花火大会の夜に俺から強引に璃桜の“彼氏”になると宣言した。

その時、璃桜は俺が彼氏になる事に嫌じゃないと言ってくれた。

でも・・・それは璃桜も俺の事を好きでいてくれたからで・・・

璃桜は俺の気持ちをまだ知らない。

 

俺は隣にいる璃桜の手をぎゅっと握った。

すると、少し驚いたように璃桜は俺の顔を見上げた。

そして、すぐに俺の手を握り返してきた。

 

それから俺と璃桜は映画が終わるまでずっと手を繋いだままだった。

 

 

映画が終わり、ほとんどの人が席を立った後、

俺と璃桜はまだ手を繋いだまま座っていた。

 

「璃桜・・・好きだよ・・・。」

璃桜の手を握ったまま引き寄せて耳元に囁くと、

璃桜は顔を赤くして黙り込んだ。

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

「私も・・・遼くんの事・・・好きだよ。」

少しの沈黙の後、璃桜が思い切ったように口を開いた。

 

「うん・・・知ってる。」

俺がそう言うと璃桜はじっと目線を絡ませてきた。

 

「昨日、タカから聞いた。

 この間、ファーストフードで話した事とか。」

 

「そ、そうなんだ・・・。」

 

「璃桜も俺の事、好きだったの?」

 

「うん。」

璃桜はコクンと頷いた。

 

「でも、先に好きなったのは俺だけど。」

俺がそう言うと璃桜は

「そんな事ないもん、私の方が先だもん。」

と、言った。

 

「じゃ、璃桜はいつから?」

 

「んと・・・去年の6月くらいから。」

 

「なら、俺の方が先だよ。」

 

「え?」

 

「俺は去年の5月くらいから。」

俺の言葉に璃桜は驚き、やや固まった。

 

「俺、ずっと璃桜の事が好きだった。」

桜色をした璃桜の唇にそっと唇を重ねて軽くキスをすると

俺の手と繋がったままの璃桜の指が微かにピクリと動いた。

 

「俺の勝ち。」

 

「うー・・・。」

俺が誇らしげに言うと璃桜は言葉に詰まった。

 

「た、確かに遼くんの方が先に好きになったのかもしれないけど

 私の方が細胞レベルで遼くんの事好きなんだもん。」

 

「ははは、なんだそれ?意味わかんねー。」

なんとなく意味はわかるけど敢えてわからないフリをした。

 

てか・・・璃桜って意外と負けず嫌い?

 

「私の勝ち。」

 

「違う、俺だよ。」

俺は璃桜の口を塞ぐようにもう一度唇を重ねた。

今度は、さっきよりも長く・・・。

 

「俺の勝ち。」

璃桜の唇を解放するとまだ何か言いたそうな顔で俺を見上げていた。

だけど、何度言ったって同じ・・・俺の方が璃桜の事、好きなんだから・・・。

 

「俺の勝ちー。」

 

「むー・・・。」

 

「俺の方が璃桜の事、好きなの。」

璃桜の口が開く前にまた唇を塞ぐとちょっと不満そうな顔をした。

 

 

そして、何度がそんな遣り取りが交わされ、ようやく璃桜は観念した。

 

 



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