HERO −特別番外編・取られてたまるかっ! 2−
―――いよいよ登校日。
ニアミスなんてカッコ悪い・・・と思った俺は
10時くらいから坂本さん達の通う高校の正門で待っていた。
午前中とは言えやっぱり8月の気温は暑い・・・。
まだ到着して10分くらいしか経っていないのに
もう汗が出てきた。
それから待つこと45分。
徐々に校舎から女の子達が出てきた。
そろそろ来るかな・・・?
ドキドキしながら待っていると少し遠くの方から
坂本さんと栗田さんが近づいてくるのが見えた。
来た・・・っ!
なんて言っていいかわからず、とりあえず坂本さんに近づいた。
「く、窪田くん・・・?」
坂本さんは俺の顔を見上げ、驚いたように口を開いた。
「ちょっと・・・いい?」
俺がそう言うと栗田さんはにやりとして
「ここじゃなんだから、駅前のファーストフード行こ。」
と、言った。
ナイスフォローです。
「ところでなんであんな所にいたの?」
店に入ってもなかなか言い出すキッカケがなく、
なんて言って切り出そうかと迷っていると
またも栗田さんがフォローしてくれた。
「・・・あのさ・・・、明日なんだけど・・・暇?」
俺は思い切って明日の事を切り出した・・・けど・・・
坂本さんは栗田さんに言っていると思ったのかまったくの無反応だ。
「璃桜に聞いてるんだよ?」
それを見かねた栗田さんがそう言うと
坂本さんは「へ?」と言ってキョトンとした。
「暇だけど・・・。」
そして、俺と栗田さんの様子を伺うように言った。
「花火大会行かない?」
「え・・・あ、うん。」
俺の誘いを意外にもあっさりOKした坂本さんは
黙ってポテトを食べている栗田さんの反応を待っていた。
だけど、栗田さんは反応するはずもない。
だって明日は来れないんだから。
「・・・アキも行くよね?」
案の定、坂本さんは少し不安そうに栗田さんに聞いた。
「ん?私は明日、予定があるから。」
・・・で、栗田さんはもちろん断る・・・と。
「じゃあ、明日6時に駅で待ってるから。」
「うん・・・わかった。」
坂本さんはちょっと戸惑いながら返事をした。
よっしゃーっ!
これで明日はいよいよ坂本さんと二人で花火デートっ。
俺は心の中でガッツポーズをした。
―――次の日。
俺は待ち合わせの駅に少し早く着いた。
改札を出たところで待っていると、
「窪田くんっ。」
と呼ぶ声が聞こえ、
ホントに来てくれたんだと思った俺は嬉しくて
思わずにやけそうになる顔を抑えながら振り向いた。
・・・だけど、その声は坂本さんじゃなくて
またあの深山静香と他二人だった。
「・・・。」
なんでまたアイツらがいるんだよ・・・?
するとアイツらの少し前に坂本さんの姿があった。
あ・・・来た。
「窪田くんも花火大会行くの?だったらまた一緒していい?」
そう言いながら駆け寄ってきたアイツらの姿を坂本さんは見つめ、
そして・・・
踵を返した・・・。
え・・・なんで?
「ねぇ、いいでしょ?」
アイツは俺の腕を掴み、にこにこしながら言った。
その間にどんどん小さくなって人ごみの中に消えていく
坂本さんの姿・・・。
マズい・・・っ!
俺はアイツに掴まれていた腕を振り解き、急いで坂本さんを追いかけた。
「あっ、窪田くんっ。」
後ろでアイツらがどうしたの?とか騒いでいるけど
知ったこっちゃない。
坂本さん・・・どこだ?
ホームに行くとちょうど電車が停車し、乗客が降りてくるところだった。
そして降りてきた乗客と入れ替わるように電車に乗ろうとしている
坂本さんを見つけた。
いた・・・っ!
今日はせっかくのチャンスなのにっ。
ここで帰られたら台無しだ。
坂本さんが電車に乗るギリギリのところで腕を掴んで引っ張ると
驚いた顔で振り向いた。
あぶねー。
「なんでいきなり帰ろうとしてんだよっ!?」
「な、なんでって・・・」
坂本さんは口篭って俯いた。
「あの子達が居たから?」
俺がそう言うと坂本さんは黙ったまま頷いた。
やっぱり・・・。
発車のベルが鳴り、走り出す電車を坂本さんは無言で見送った。
「行こう。」
俺は坂本さんの腕を掴んだまま改札に向かった。
すると改札の手前で彼女の足がピタリと止まった。
彼女の視線の先には・・・
アイツらの姿があった。
「俺、あの子達とは行く気ないよ?」
「えっ。」
てっきり俺がアイツらとも行くんだと思っていたのか、
坂本さんはパッと顔をあげた。
当たり前だろ?
だって、今日は誰にも邪魔されたくない。
タカに坂本さんを取られる前に俺のモンにするって決めてんだから。
掴んでいた腕を放して、すぐに手を繋いで改札を一緒に抜けた。
そしてアイツらに近づいて行くと、
「窪田くん、急に走り出すからどうしたのかと思った。
ね、早く行こうよ。」
と、アイツらが目の前に来た。
「彼女と一緒に行くから・・・だから、一緒には行かないよ。」
俺はアイツらを突き放すべく言い放った。
「え・・・彼女って・・・窪田くん、
この間“彼女”いないって言ってたじゃない。」
そんな会話を坂本さんは唖然としながら聞いている。
「言ったけど、でも今はこの子と付き合ってるから。」
俺はさらにキッパリ言い放ち、少しずつ俺にわからないようにか
ジリジリと後ずさりしていた坂本さんを引き寄せた。
「じゃ、そういう事だから・・・璃桜、行こう。」
そしてポカーンとしている彼女を連れて少し足早に歩き出した。
アイツらの姿が見えなくなった頃、
彼女がまだ混乱しているみたいに口を開いた。
「あ、あの・・・窪田くん・・・?」
「ん?」
「な、何も“彼女”って嘘つくことは・・・」
「なんで?嘘じゃないけど?」
「え・・・で、でも・・・」
「俺、璃桜の彼氏になる事に決めたから。」
「そ、そんなのいつ決まったのっ!?」
「ついさっき。」
・・・ホントは10日前からだけど。
「へ?」
「タカに取られる前にと思ってさ。」
「あっ!?そういえば相葉くんは?」
彼女はタカも来ると思っていたらしい。
「相葉くんも来るんでしょ?」
「来ないよ。」
「えっ!?」
「今日はタカが来れないのをわかってて、璃桜の事誘ったんだよ。
ちなみに、栗田さんもそれをわかってて俺に協力してくれたってワケ。」
俺がそう言うと彼女はあんぐりと口を開けていた。
「そんな事よりさっきの話。」
「・・・へ?」
「俺が彼氏じゃ璃桜は嫌?」
最後のダメ押し・・・
タカの方がいいって言われたらどうしよう・・・
そう思いながら、俺は思い切って彼女に聞いた。
「・・・嫌じゃないよ。」
彼女はハッキリ俺の目を見つめながら言った。
やったーーーーーーっっっ!!!
「じゃ、決定。」
そう言った俺に璃桜は少し顔を赤くして微笑みながら頷いた。
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