言葉のかわりに−第一章・10−
Juliusのライブが終わり、香奈が唯に感想を求めてきた。
「ね、唯どうだった?」
「うん!すっごくカッコよかった!」
唯は珍しく興奮気味だ。
「みんな上手いし、何よりKazumaくんの歌声がすごく素敵だったーっ!」
その他に曲についてや衣装のことなど、よほど気に入ったのか
唯はいつもよりもテンションが高く、口数も多くなっていた。
香奈はそんな唯をニコニコしながら見ている。
混雑を避けてライブハウスからほとんどの人が出るのを待った後、
唯と香奈も外に出た。
「ちょっと裏に行ってみない?」
「裏?」
「うん、楽屋口。」
そう言って香奈は唯をライブハウスの裏手にある楽屋口へと連れて行った。
しかし、すでにファンの子達でいっぱいでメンバーが出てきているのかすらわからない。
「あー、やっぱ、いっぱいだ・・・。」
香奈が残念そうに呟いた。
「すごい・・・出待ち?」
「うん、みんなメンバーが出てくるの待ってるの。」
「ふぅーん・・・。」
少し考えてから唯は口を開いた。
「・・・帰ろっか。」
「うん、そだね。いつ出てくるかわかんないし、出てきてもあれじゃ話しかけれないだろうし。」
香奈も諦めたようだ。
「ねぇ、香奈。ちょっとお茶して帰ろ?」
唯が珍しくそう言ってきた。
「うん!」
もちろん!という風に香奈は応えた。
二人は楽屋口にくるりと背を向けて歩き始めた。
ちょうど和磨が出てきたのも気づかずに・・・。
家に戻った唯はベッドの上で携帯を握り締めていた。
(篠原くんに電話してみようかなぁ・・・?)
しかし、楽屋口いたファンの数を考えると
その中の誰かとご飯でも食べているかもしれない・・・。
そう思い、携帯を置いた。
(邪魔しちゃ悪いし・・・。)
そう自分に言い聞かせ、ごろんとベッドに寝転んだ。
いつの間にかそのまま眠ってしまっていた。
次の日の日曜日、唯はライブで聞いたバラードの曲を思い出していた。
(あの曲すごく綺麗な曲だったな・・・。)
自分の部屋にあるピアノに向かい、まだ耳に残っている旋律を弾いてみる。
唯には絶対音感というものがある。
4才からピアノを習っているからだ。
先生から出される課題曲以外を弾くのは久しぶりだ。
そのせいもあって唯は時間が経つのも忘れて弾いた。
月曜日の朝、唯と香奈が自分達の教室へ向かう途中、和磨達の教室の前を通ると
いつもよりもすごい人だかりができていた。
その原因はやはり和磨と拓未。
「今日はやけに多いね。」
「出待ちしてても、なかなか話せないし教室にくれば会えるから
チャンスとばかりにみんなくるみたい。」
「なるほど・・・。」
(篠原くんと話したかったけど、あれじゃ今日は無理ね・・・。)
唯は少しがっかりして、ため息をついた。
放課後、唯は掃除当番だった為いつもより帰りが遅くなった。
「香奈、お待たせ。」
「もう帰れるの?」
「うん。」
そう言って香奈と一緒に教室を出る。
その時、香奈の携帯が鳴った。
「もしもーし。」
軽い感じで香奈が電話の相手と話し出す。
「・・・うん、・・・うん!わかった。今からいくねー。」
そう言って電話を切った。
(なんか用事でも入ったのかな?)
唯がそう思っていると、
「いつものファーストフードで拓未くんが待ってるって!早く行こ!」
香奈は嬉しそうに言うと唯の手を取り、ぐいぐいと引っ張って歩き始めた。
ファーストフードに着くと、拓未がすぐに二人を見つけて声をかけてきた。
隣には和磨も座っている。
なんとなく不機嫌な感じがしたのは気のせいだろうか。
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