言葉のかわりに−第一章・13−
「レッスンて・・・唯ちゃん何か習い事でもしてんの?」
拓未が握手をしたまま香奈に聞いた。
「うん。唯は4才からずっとピアノを習っているの。」
「へぇーっ!そーなんだー?」
(4才からずっと・・・。てことはさっきの男は同じところで習ってるヤツか?)
「じゃ、もしかして絶対音感とか持ってたりすんのかな?」
「するするぅ!」
「すげぇーっ!」
(絶対音感か・・・すごいな。)
それよりも・・・。
まだ握手をしたままだ。
「てか、いつまで手握ってんだ?」
このままだとずっと手を離しそうにない二人に俺は突っ込みをいれた。
「ちっ!バレたか。」
拓未はそう言ってやっと香奈から手を離した。
「あははっ。私はずっとこのままでもよかったけど?」
冗談なのか、本気なのか・・・。
しれっとした顔で言っている。
「俺、帰るわ。」
「和磨、俺達に妬いてんのか?それとも唯ちゃんが帰ったから拗ねてんのか?」
「ちがうっ!バイト。」
確かにバイトもあるが、半分は図星だ。
やっと話ができると思った矢先に予想外の邪魔が入り、一言も話せないまま彼女は帰ってしまった。
まぁ、そのおかげで彼女について少しわかった事があるけれど。
4才からピアノを習っていて、絶対音感がある事。
和磨は同じ“音楽”に携わっているという事がなんだか嬉しかった。
ジャンルはちがうだろうけれど。
「じゃーな。」と言って二人に背を向け、手をひらひらと振った。
バイトを終え、和磨は自転車で家路を走っていた。
目の前には女の子が歩いている。
背格好からして中学生くらいか・・・?
(おいおい、中学生がこんな時間にこんなとこ一人歩きって大丈夫かよ?)
時間はまだ9時過ぎといっても、人通りが少ない場所である。
女の子を追い越す瞬間、なんとなくちらりと横目で見た。
「っ!?」
和磨は自分の目を疑った。
「神崎さん!?」
唯だったのだ。
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