言葉のかわりに−第一章・16−

 

 

和磨はモヤモヤした気分でいっぱいだった。

部屋で歌やギターの練習をしていても、曲を作っていても、

詞を書いていても、何をしていても先ほどの告白シーンが頭を掠める。

いつもなら時間を忘れるほど集中してできることが、今日は何一つ集中してできない。

和磨は携帯を取り、メモリーから唯の番号を呼び出す。

けれど、なかなか発信ボタンが押せない。

(何も用事ないしな・・・。)

携帯を閉じ、そのまま握り締める。

(やっぱ掛けてみるか・・・。)

携帯を開き、また唯の番号を表示させる。

けれど、やっぱり発信ボタンが押せない。

(だいたい掛けたところで何を話せばいいのか・・・。)

(まさかさっきの事、どうするのか聞ける訳ないしな・・・。)

ベッドの上に携帯を投げ、「何やってんだ・・・俺は。」そう言ってため息をついた。

今までこんなに一人の女の子が気になるなんて事なかったのに・・・。

どんなにファンの中にかわいい子がいても、まったく気にならなかった。

告白されて付き合う事はあったが、どの子も長続きはしなかった。

原因は和磨自身。

告白してくるのはだいたいファンの子で他校の子だ。

そのせいか普段の和磨を知らないのでステージの上の“Kazuma”と

“和磨”のギャップに幻滅する。

・・・というのは、JuliusのKazumaとしてステージに立っている時は普通にMCもするし、

明るい曲を演奏する時は、笑ったりもする。

クールで無口な印象は感じさせない。

しかしそれが一歩ステージから降り、普段の和磨に戻ると途端にクールで無口な男になる。

しかも和磨は拓未のように特に女好きでもないので愛想もない。

そんなワケで普段の和磨を知っている子でも彼についていけないのだ。

彼女よりも先にバンドの練習やバイト、友達との約束が入ればそれを優先する。

加えてなにか用事がない限り、和磨からは連絡しないといった執着のなさ。

そんなだからもちろん去るもの追わず・・・。

面倒くさくなって和磨から別れを切り出すパターンも少なくない。

だけど今、つい二週間前に出会ったばかりの小柄な女の子がやけに気になる。

(てか、なんで俺こんなに気になってんだ?)

さっきの告白の事だってそもそも自分には関係のない事だ。

なのに彼女がどうするのか気になる。

もし・・・もしも、彼女が岡本と付き合うのだとしたら・・・?

そう考えただけでなんだかイラっときた。

(なんなんだ・・・?この込み上げてくる感情は・・・。)

(嫉妬・・・?)

 



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