言葉のかわりに−第二章・11−

 

 

最後の一球・・・。

あの女の声で手元が狂ってしまった・・・。

そのおかげでボールは見事に外れ、9枚全部を抜けなかった。

俺の“唯とディズニーリゾートでデート計画”が幻と消えた・・・。

(くそっ!)

俺はあの女を横目で見た。

数人のファンの子とキャーキャー言っている。

マウンドを降りると野球部員の男が俺に近づき、

「惜しかったですね。けど、8枚抜きはすごいですよ!」

と言いいながら、「おめでとうございます!」と景品が入った紙袋を渡してくれた。

(めでたくねぇよ・・・。)

俺が唯の方に近づこうとしていると、それを遮るようにあの女が駆け寄ってきた。

そしてその後すぐに他のファンの子も駆け寄ってきて俺は囲まれた。

(またか・・・。)

思わずため息が出た。

(唯のところへ行きたいのに・・・。)

そう思い、唯の方を見ると他の男子生徒と楽しそうにしゃべっていた。

(あの男・・・唯と同じクラスの戸田か。)

「ねぇ、Kazumaくん、一緒に模擬店回ろうよ!」

そう言ってあの女は俺の腕を取った。

他のファンの子も「行こう、行こう!」と言い、勝手に盛り上がっている。

冗談じゃねぇっ・・・!

「ごめん、一緒に回ってる子待たせてるから。」

俺はあの女から腕を離し、ファンの子達から離れた。

本当は「“彼女”を待たせてるから。」と言いたいところだったが、

あの女は俺の中では要注意人物だった。

それに・・・、唯が俺と付き合っている事を公にしたくなさそうなのを

なんとなくわかっていたし・・・。

「唯。」

俺が名前を呼ぶと唯は少し驚いた様な顔で振り向いた。

(ファンに囲まれてたから来ないと思ってたのか?)

「行こう。」

唯の腕を取り、少し強引に戸田から引き離し、

俺は足早に歩き出した。

唯はまたファンの子を気にしているみたいだけど、そんなことはどうでもいい。

とりあえず早くあの女から、戸田から離れたかった。

 

「あ、あの・・・かず君・・・?」

明らかに不機嫌そうな俺に遠慮がちに唯が話しかけてきた。

「うん?」

「上着・・・着ないと。」

「あ?あぁ・・・。」

そうだった。

唯に上着とネクタイを持たせたままだった。

「ごめん、ちょっと持ってて。」

上着を着る間、唯にペアマグが入った紙袋を持っててもらった。

「結局、ペアマグ・・・。」

(結構頑張ったんだけどな・・・。)

唯とのディズニーデートの夢が消え、落ち込んでいると、

「でも、8枚抜きはすごいよ?」

と言って、唯は俺の顔を覗き込んだ。

だけど俺がディズニーのパスポート狙っていたのにと言うと、

「でも、ペアの物がまた一個増えたんだし。」

と言って笑ってくれた。

確かにそうだけど。

「ディズニーは今度一緒に行こう?」

そう・・・、そうだ・・・。

別にディズニーなんて自分達で行こうと思えば行ける。

それに、せっかく唯と二人でいるのに、不機嫌なままじゃ唯に悪い。

 

帰りに二人であの公園の展望台に行った。

この時間なら綺麗な夕陽が見られそうだ。

ベンチに座って、もらったペアマグを開けてみた。

「わぁ、かわいい・・・。」

唯はペアマグを見た途端そう言って喜んだ。

陶器じゃなく、耐熱ガラスだったのは予想外だったけど。

「これ、熱いのも冷たいのもOKだから一年中使えるね。」

唯は嬉しそうにピンクのグラスマグを持ってそう言った。

夕陽が当たってキラキラとグラスマグに反射して唯の横顔を照らしていた。

その横顔があまりにも綺麗で思わず見惚れそうになった。

俺が今日からさっそく使おうというと、

「かず君・・・ありがと。」

と、微笑みながら唯は俺を見つめ返してきた。

思わず顔が熱くなる。

「・・・うん。」

夕陽が出てる時間でよかった・・・。

 



ぽちっと押して応援してください♪



小説の人気ランキングです。よろしければぽちっと・・・


ネット小説ランキング>恋愛コミカル部門>「言葉のかわりに」に投票
ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)

 

HOME
INDEX
BACK
NEXT

 

[Link]