言葉のかわりに−第二章・14−

 

 

ステージが暗くなり、Juliusのメンバーがスタンバイする。

客席にはさっきまでと比べ物にならないほど人が集まってきていた。

さすが“客寄せパンダ”である。

シン・・・と静まり返った中、Junにピンスポがあてられ、

ベース音がビートを刻み始めた。

そしてTomoyaのドラムがそれに乗っかり、Takumiのギターが入った瞬間、

ステージが一気に明るくなり、客席から歓声があがった。

唯はステージの袖から見えるKazumaの姿にドキドキしていた。

黒いレスポールギターを弾きながら歌っている後姿。

Kazumaの顔があまり見えないのが少し残念だが、

客席からは絶対に見ることができない光景・・・スペシャルシートだ。

唯は初めてJuliusのライブを見た時と同じ様にKazumaの声に惹きつけられ、

Juliusの世界へと惹きこまれていった・・・。

 

あっという間に4曲が終わり、次は和磨が聴いてて・・・と言っていた5曲目。

Kazumaが一瞬だけ唯に視線を移した後、5曲目が始まった。

(・・・この曲っ!?)

まだ一度しか聴いたことがないけれど・・・曲が始まってすぐにわかった。

唯がJuliusの曲の中で一番好きなあのバラードだった・・・。

一度目に聴いた時は、ただただ綺麗な曲だと思った。

だけど今・・・Kazumaがこの曲を自分の為に歌ってくれている・・・。

そう思うと詞の一語一語、旋律の一音一音までもが心に沁みてくる。

曲が終わる頃、気がつけば涙が溢れていた・・・。

唯はOracleのメンバーにわからないように涙を拭き、

Kazumaの後姿を見つめた。

 

Juliusのライブはアンコールを含めて全12曲で終わり、

メンバーがステージの袖へと下がってきた。

香奈は満面の笑みで「お疲れ様〜っ!」とTakumiに駆け寄った。

ファンの中で一番先に“お疲れ様”が言える事が嬉しいのだろう。

唯も少しだけ笑みを浮かべKazumaに「お疲れ様。」と言うと

優しい笑顔が返ってきた。

すべてのバンドのライブが終わり、JuliusとOracleのメンバーは

一緒に機材の片付けをし、視聴覚室へと戻った。

 

「香奈、この後Oracleのみんなでどっか行くのか?」

隣の準備室から拓未の声がした。

着替えをする女子生徒はもういないので最後はJuliusの更衣室になったのだ。

「んー、今決めてるとこー。」

「んじゃ、JuliusとOracleでどっか打ち上げ行かない?」

「「「「行く、行くーっ!」」」」

唯以外のOracleのメンバーは二つ返事をした。

「唯も行くでしょ?」

黙っている唯に香奈が有無を言わさぬ顔で言った。

「で、でも・・・Juliusのファンの子は・・・?」

「また、そんな事気にしてんのぉ?」

香奈が呆れた声で言った。

「・・・。」

「そんなの気にしなくていいのに。」

黙り込んだ唯の後ろから拓未の声がした。

いつの間に準備室から出てきたんだろう・・・。

「俺達いつも打ち上げはメンバーだけでやってるんだよ?」

拓未の後ろから准が顔を出し、ニッと笑った。

「え・・・そ、そうなの・・・?」

「いつもファンの子と一緒に打ち上げやってると思ってた?」

さらに准の後ろから出てきた智也もにっこり笑いながら言った。

「う、うん・・・。」

そして最後に和磨が準備室から出てきた。

「ファンの子なんて来ないから・・・だから、唯も一緒に行こう。」

和磨は優しく微笑みながら唯の顔を覗き込んだ。

「・・・うん。」

「んじゃ、決まり。」

唯がようやく首を縦に振ったのを見て拓未はニッと笑い、

さっそくどこの店にするか決め始めた。

 

JuliusとOracleのメンバーは“ファミレスで合流作戦”を実行に移す事にした。

まず、Oracleのメンバーが正門から出て、出待ちのファンの状況などを

Juliusに実況生中継し、Juliusのメンバーが一人ずつ別方向に逃げる。

相手は女の子なので全力疾走すれば振り切れる・・・とまぁ、至って単純な作戦だ。

しかし、実際は正門のあたりで出待ちをしていたファンを他の人の迷惑になるからと

文化祭実行委員会と先生達が追い払ってくれていた。

さらにあの佐々木悠子が機転を利かせ、Juliusのメンバーをこっそり裏門から

出してくれたおかげでファンに捕まる事無く学校から脱出することができた。

 

無事、中華系のファミレスで合流したJuliusとOracleのメンバーは

お互い自己紹介し、まずはお疲れ様の乾杯をした。

もちろんウーロン茶で。

「なんかコンパみてぇー。」

「若干、男女の人数バランスがおかしいけど。」

「まぁ、気にするな。」

そんな会話をしつつ、今日のライブの話題で話は盛り上がり、

JuliusとOracleのメンバーはすっかり打ち解け、

携帯番号とメールアドレスをそれぞれ交換した。

そして“コンパのような打ち上げ”で唯と和磨、

香奈と拓未はようやくOracleのメンバーに交際宣言をした。

 



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