言葉のかわりに−第二章・16−
文化祭が終わった翌日。
放課後、唯と香奈のクラスでは“執事・メイド喫茶”の
収支報告と打ち上げがあった。
元々、赤字も黒字も出ないように計算をしていたが、
写真撮影が思わぬ好評で大幅な黒字となった。
中でも一番人気だった唯はダントツで、
利益をほとんど一人で稼いだようなものだった。
おかげで当初予定していた打ち上げよりかなり豪華になった。
和磨と拓未のクラスでも“オバケ屋敷”の収支報告と
打ち上げがあった。
こっちは赤字も黒字もなかったようだ。
と言うわけで、和磨達のクラスはジュースで
乾杯しただけで打ち上げは終わった。
「こっちはあっさりした打ち上げだな。」
拓未は苦笑しながら言った。
「まぁ、赤字じゃないだけマシだろ。」
和磨もそう言いながら苦笑している。
「香奈と唯ちゃんとこの打ち上げはすごいらしいぞ?」
「へぇー、黒字になったんだ?」
「例の写真撮影が大ヒットしたらしい。」
「あぁ、あれか・・・。」
「利益のほとんどは唯ちゃんの撮影で稼いだみたいだぞ。」
「え・・・。」
和磨は唖然とした・・・。
(確かに唯の人気はすごかったけど・・・。)
「と言うワケで、あっちはまだまだ打ち上げが
お開きになりそうにないから先に帰れってさ。」
拓未が携帯の画面を和磨に向けた。
香奈からメールが来たのだろう。
(唯からはメール来てないな・・・。)
・・・と、思っていると、
「ちなみに唯ちゃんはメールを打つ暇がないらしい。」
「はぁ?」
「クラスの男子に捕まってるって。」
「え・・・。」
「だから、おまえにも先に帰ってくれってさ。」
「・・・。」
(マジかよ・・・。)
和磨は不機嫌そうに頬杖をついて黙り込んだ。
結局、和磨は拓未と二人で楽器店に寄った後、
その近くのファースフードに寄って帰ることにした。
和磨達が店内に入ろうとした時、窓際の席に
よく知った顔があった。
「・・・っ!」
・・・唯だった。
(唯・・・?)
楽しそうに誰かとしゃべっている。
唯の目の前の席を見ると、戸田直樹が座っていた。
文化祭の時も唯と楽しそうにしゃべっていた男だ。
(あいつは・・・。)
唯と直樹のテーブルには二人しかいない。
という事は、二人で来たのだろうか?
だけどなぜこんな場所に?
「乗り込んでみるか?」
拓未は和磨をちらりと見た後、和磨の視線の先にいる二人に目をやった。
「・・・いや、いい。」
「けど、気になってんだろ?」
「・・・。」
「一緒にいる相手はともかく、なんでこんな所にいるのか。」
「・・・いいって。」
「・・・ま、おまえがいいならいいけど?」
「・・・。」
和磨は唯と戸田にもう一度視線を移した後、踵を返し足早に歩き始めた。
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