言葉のかわりに−第二章・22−

 

 

―――次の日。

朝、教室に入ると拓未の所に香奈が来ていた。

「おはよ、篠原くん。」

「おぃっす。」

「おはよう。」

和磨が珍しく二人に挨拶を返した。

いつもなら無言で手を軽くあげるだけだが、

今朝は余程機嫌がいいのだろう。

「お、和磨。ピアスもう一箇所あけた?つーか、新しいピアスじゃん。」

拓未はこういうところも結構鋭い。

「・・・ん、まぁ。」

「綺麗なダークグリーンの石だね。」

香奈は和磨のピアスを見てそう言った。

(ダークグリーン?)

「赤なんだけど・・・。」

和磨は香奈がダークグリーンと言ったのを不思議に思い首を捻った。

「おまえ、どこが赤だよ?」

拓未もなんだかおかしな事を言っている。

「・・・?」

和磨は鏡を出してピアスを見た。

「・・・あれ?」

ダークグリーンだ・・・。

昨夜見た時は、確かに綺麗な赤色をしていたのに・・・。

「あ、篠原くん、ひょっとして・・・」

香奈は何かピンときたらしい。

「赤に見えたのっていつどこで?」

「んー、昨夜自分の部屋で。」

「それ、アレキサンドライトじゃない?」

やはり女の子はこういった天然石に詳しいのか、

香奈はすぐにわかったようだ。

「うん、そう。」

「アレキサンドライト?」

拓未も初めて聞く名前らしく、香奈に聞き返した。

「うん、太陽の光とか蛍光灯の下だと、ダークグリーンに見えて、

 白熱灯とかろうそくの明かりの下だと赤い色に見える天然石。」

「「へぇー。」」

和磨と拓未は感嘆の声をあげた。

「・・・て、篠原くん、知らずに買ったの?」

香奈が鋭い突っ込みを入れてきた。

「・・・えーと。」

和磨が返答に困っていると、「あー、そうか。」

と言って拓未がニヤリとした。

やな予感がする・・・。

「和磨。おまえ昨日、誕生日だったよな?」

「あ、そーゆーコトか!」

拓未がたった一言、言っただけで香奈も全てを悟ったようだ。

「・・・。」

和磨は観念したかのように黙っていた。

この二人が相手では隠せないと思ったからだ。

まぁ、隠すようなことでもないし。

「そうか、そうか・・・それでピアスもわざわざもう一箇所あけたのか。」

「篠原くんて意外とわかりやすいねー。」

そう言って二人ともニヤニヤしている。

「てことは、昨日唯と会えたんだ?」

「ん・・・まぁ、一瞬だったけど。」

和磨はもうどうにでもなれと言わんばかりに素直に昨夜の事を話した。

 

「へー、唯ちゃんもなかなかやるねぇ。」

「唯って意外と行動力あるからねぇー。」

「まぁ・・・一番びっくりしたのは俺だけどな。」

和磨は苦笑いをした。

「唯らしいな・・・アレキサンドライト贈るなんて。」

香奈は和磨をちらりと見て微笑んだ。

この時、香奈が言った言葉の意味を和磨はだいぶ後になって知ることになる・・・。

 



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