言葉のかわりに−第二章・5−

 

 

Oracleの初練習があった数日後、いつものように

唯と和磨は一緒に帰っていた。

「唯、ちょっと公園寄って行かない?」

和磨は、唯に告白をしたあの公園へ行こうと誘った。

付き合うようになってから二人でよく一緒に行く公園だ。

「うん。」

唯もなんの抵抗もなく返事をした。

 

公園に着くといつも高台にある展望台に行く。

街を一望できて、タイミングがよければ、綺麗な夕陽が見られる。

人通りが少ない場所から階段を登っていく為、ここにくる人はほとんどいない。

学校にいるとお互いいろいろと周囲が気になる事もあるので

唯と和磨はこの静かな場所が気に入っていた。

 

二人でベンチに腰を掛け、展望台からの景色を眺めていた。

9月にはいって暑さがやわらぎ、心地よい風が二人を包んでいた。

「これくらいの季節の風が一番気持ちいいね。」

そう言って唯は、空を見上げて目を閉じた。

「あぁ、そうだな・・・。」

和磨も同じ様に空を見上げた。

しばらく二人で空を眺めていると不意に和磨が唯に視線を移した。

「唯・・・。」

「ん?」

名前を呼ばれ、唯も和磨に視線を移す。

「誕生日おめでとう。」

和磨は優しく微笑みながらリボンのかかった小さな箱を唯の前に差し出した。

「え・・・。」

唯は驚いた顔で和磨を見つめていた。

9月12日の今日・・・、唯の17回目の誕生日だった。

 

「・・・知ってたの?」

「てか、知らないと思ってた?」

和磨はククッと笑った。

実は、香奈がこっそり和磨にそれとなく教えていたのだ。

唯は和磨からプレゼントを受け取り、やや固まったままでいた。

「開けてみて?」

和磨はそう言って唯に開けるよう促す。

「う、うん。」

唯はゆっくりとリボンを解き、小さな箱を開けた。

「これ・・・。」

中にはネックレスが入っていた。

シルバーのシンプルなデザインで、しかもペアだ。

もちろん和磨が以前付き合っていた彼女にはこんな事などした事はない。

プレゼントを選ぶのも買うのも初めてで、あれこれ悩んだ。

「ペアネックレス。」

和磨はそう言って優しく微笑み、女性用のネックレスを

唯の首に手を回してつけてくれた。

「あ、ありがとう・・・。」

唯は少し頬を赤くしながら、嬉しそうに言った。

「俺がもう少し大人になったら、もっといい物買えるんだけどな。」

和磨は照れくさそうに笑った。

唯も男性用のネックレスを同じ様に和磨の首に手を回してつけた後、

「値段じゃなくて・・・かず君の気持ちだけで嬉しいよ?」

と言って微笑んだ。

 

「実はこれ・・・唯のと俺のを合わせると十字架になるんだ。」

そう言って、和磨は自分のネックレスと唯のネックレスを合わせた。

自ずと唯と和磨の顔が近づく。

和磨はそのまま、唯の唇にそっと自分の唇を合わせた・・・。

「これ・・・いつもつけてて?」

和磨は唯の黒い瞳を真っ直ぐに見つめながら言った。

「うん。」

唯も視線を逸らす事無く答えた。

平日も休日もなんだかんだで思うように会えない事も少なくない。

それならせめて、同じ物をつけていたい・・・。

しかし、指輪はサイズを知らないし、聞くとバレバレだし、

何より周囲の人間が騒ぐだろう。

だったら・・・目立たないとこでペアの物・・・?

それで考え付いたのがペアネックレスだった。

 



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