言葉のかわりに−第二章・6−

 

 

それからあっという間に文化祭一日目。

唯と香奈のクラスも模擬店をやっていた。

男子は執事、女子はメイドの格好でおもてなしする喫茶店。

お昼の1時から3時までが唯と香奈が手伝う時間になっていた。

 

そろそろ交代の時間。

唯と香奈は模擬店の裏側でメイド服に着替えていた。

「うはっ!唯、なかなかハマってるねぇ〜っ。」

全身メイド服に身を包んだ唯を香奈が絶賛した。

「え・・・、そ、そぉ?」

唯は恥ずかしそうにしながら、鏡に映った自分の姿を見た。

メイド服と言っても、もちろんフツーのではなく、所謂秋葉系のだ。

薄いピンクのパフスリーブ・・・俗に言うちょうちん袖のワンピース。

絞ってある袖口と胸元には小さなリボンがついている。

もちろんミニだ。

スカートの裾の下からはふりふりの白いレースが見えている。

ワンピースの上からつけている白いエプロンにも

大きめのふりふりレースがついていて、

頭につけた薄いピンクのカチューシャにも、もちろん白いレースがついていた。

とどめは小さなリボンがついた白いハイソックス。

一体誰がどこでどうやって調達してきたのか・・・。

背が低く、少し童顔な唯は見事にメイド服にハマッていた。

秋葉原のメイド喫茶でバイトをしていると言っても誰もが信じてしまうだろう。

「そろそろ交代に行こうか。」

「う、うん。」

 

唯と香奈が模擬店に出ると、次々とお客が入り始めた。

みんな唯を目当てに入ってくる。

「あのー、一緒に写真いいですか?」

さっそく数人の男子が唯に声を掛けてきた。

「あ・・・、は、はい・・・。」

模擬店の売りは気に入った執事、メイドがいれば一枚100円で

写真撮影OKというところ。

クラスの中で一番メイド服がハマッていた唯は当然人気が集中した。

「やっぱ“執事・メイド喫茶”やって正解かも!唯の集客力はすごいね。」

そう言って香奈はニコニコしている。

「え・・・。」

唯は戸惑いつつ、さっきから視線を感じて恥ずかしくてたまらないと言った感じでいた。

そこへ和磨と拓未がきた。

香奈は拓未達に近づき、「おかえりなさいませ、ご主人様。」

と言ってにっこりと笑った。

「お、香奈。結構似合ってんじゃん。」

拓未はニッと笑った。

和磨は唯を探してキョロキョロしている。

「私より似合ってる人があそこにいるわよ。」

香奈は写真撮影の順番待ちの列の先にいる唯に視線を向けた。

「うほっ!唯ちゃん、ハマッてる!」

拓未は唯の姿を見るなりそう言った。

「でしょ?」

香奈はクスッと笑った。

「てか、これなんの行列?」

和磨が怪訝な顔をしながら香奈に聞いてきた。

「あ、写真撮影。」

「写真撮影?」

「そそ、ここの売りは気に入った執事やメイドを一枚100円で写真撮影できるの。」

「ふーん・・・。」

和磨は改めて行列を見て、あからさまにおもしろくなさそうな顔をした。

「んじゃ、香奈。後で俺と撮って?」

拓未がそう言うと、

「はい、畏まりました。ご主人様。」

香奈はにっこり笑った。

「唯ちゃんも後で一緒に撮ってもらおっと。」

「え・・・?」

和磨は思わず拓未を見る。

拓未は和磨をちらりと横目で見るとニヤッとした。

 

しばらくして、ようやく唯の写真撮影の行列が途切れた。

「唯ちゃん、お疲れ!俺にも撮らせて?」

拓未は今がチャンスとばかりに唯に声をかけた。

「あ、あれ?いつの間に来たの?」

唯は驚いた顔で振り返った。

「1時間くらい前かな?」

「全然気がつかなかった・・・。」

「ははは、だろうね。」

「望月くん、香奈とはもう撮った?」

「うん、さっき撮ったよ。後は唯ちゃん。」

そう言って拓未はニッ笑うと、

「おい、和磨。なに呑気に座ってんだよ、こっち!」

と、不機嫌そうな和磨を呼んだ。

「え・・・、なんだよ?」

和磨はのそのそと唯と拓未に近づいた。

「んじゃ、和磨と唯ちゃん並んでー。」

「「えっ!?」」

「えっ・・・て、一緒に写真撮るんだよ。」

唯と和磨はキョトンとしている。

「ほら、グズグスしてたらまた人が増えてくるぞ?」

「あ・・・、うん。」

拓未に促され、和磨は唯の隣に並んだ。

「じゃ、撮るぞー・・・て、おまえら少しは笑えよ。」

せっかくのツーショットなのに二人とも緊張しているのか全然笑っていない。

仕方なく香奈は唯に近づき、唯の弱点である脇腹をくすぐった。

すると、途端に唯がケラケラと笑いはじめた。

その様子が可笑しくて和磨も思わず笑った。

「お、いい感じ。二人ともこっち見てー。」

・・・カシャ!

香奈の“くすぐり作戦”で二人とも笑顔のツーショットが撮れた。

拓未がデジカメのモニターで撮った画像を確認する。

「ん、いいねー。」

それを一緒に覗き込んで見ていた香奈も満足そうだ。

「じゃ、これ後でメールで送るから。」

拓未はニッと笑った。

 



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