言葉のかわりに−第二章・7−

 

 

「そーゆーコトだったのか・・・。」

唯達の“執事・メイド喫茶”を出た後、和磨は徐に口を開いた。

「なにが?」

拓未はニヤニヤしながらとぼけている。

「おまえ、唯と一緒に写真撮るとか言ってたじゃねぇか。」

「俺は一言も“俺と一緒に”とは言ってないけどなー。」

「・・・。」

「唯ちゃんメイド服ハマってたなー。」

「・・・。」

「惚れ直しちゃった?」

拓未は悪戯っぽい笑顔を和磨に向けた。

「あのな・・・。」

「てか、おまえ、こうでもしないと一緒に写真なんか撮らなかっただろ?」

「・・・まぁ・・・な。」

おっしゃる通り。

「欲を言えば唯ちゃんの肩を抱いてるとこがよかったけどな。」

拓未はしれっと言う。

「なっ・・・!」

和磨は少し赤くなりながら何か言いたそうな顔をした。

「まぁ、恋愛初心者のおまえに人前でやれと言うのは

 かわいそうだと思ってやめといた。」

「・・・。」

何も反論できない・・・。

「しかし、唯ちゃんの人気はすごいな。」

「ん?ああ、そうだな。」

唯の人気の高さはあの行列が物語っていた。

拓未が和磨と唯のツーショットを撮った後も、再び行列が出来始め、

和磨達が“執事・メイド喫茶”を出る頃にはまた長蛇の列になっていた。

(結局、ツーショット写真は俺だけじゃないんだけどな・・・。)

和磨がそんなことを思っていると、

「おまえと撮った唯ちゃんが一番かわいいと思うぞ?」

拓未がそう言った。

「?」

「他のヤツと写真撮ってる時の唯ちゃん、見てないのか?」

そりゃ、自分の彼女が他の男と写真撮ってるとこなんか誰だって見たくない。

「笑ってなかったり、顔が引き攣ってたりだったぞ。」

「・・・え?」

「香奈がくすぐったから・・・てのもあるけど、

 おまえと撮ってる時が一番いい顔してた。」

拓未は写真が好きでよくいろいろ撮っているからか、

そういった観察力も鋭い。

コイツがそういうなら、きっとそうなのだろう。

俺はなんとなく少し嬉しくなった。

 

しばらくして、制服に着替えた唯と香奈に合流した。

「あ、メイド服脱いだのかー。」

ちょっと残念そうに拓未が言うと、

「てか、あの格好じゃさすがにうろつけないよー。」

香奈はケラケラと笑った。

唯と和磨は拓未と香奈の後ろを歩いていた。

「かず君のクラスは何やってるの?」

「オバケ屋敷。」

「へぇー、かず君オバケ役とかやらないの?」

「俺と拓未は裏方の大道具を手伝ったから、やらなくていいんだ。」

「そーなんだ。」

「てか、俺がオバケ役やってるとこなんて想像できないだろ?」

和磨が苦笑しながら言うと、

「うん、確かにできないかもー。」

そう言って唯もクスクスと笑った。

(メイド服も悪くないけど、俺はやっぱ制服姿とか自然にしてる唯がいいな・・・。)

そんな事を思い、和磨が唯に微笑みかけているとJuliusのファンの子が集まってきた。

あっという間に、囲まれる和磨と拓未。

それと同時に小柄な唯は人だかりからはじき出されて

地面に倒れこむように転んでしまった。

「唯っ!」

急いで和磨が駆け寄ろうとするが、女の子達がなかなか道を開けてくれない。

拓未と香奈も唯が転んだことに気がついて、駆け寄ろうとする。

「ちょっ、・・・どいて!」

ようやく女の子達を押し退けて和磨が唯を抱き起こした。

「唯、大丈夫か?」

和磨が心配そうに唯の顔を覗き込んだ。

「う、うん。」

唯はスカートについた砂を払いながら、和磨とあまり目を合わそうとしないでいる。

「怪我は?」

「だ、大丈夫・・・。」

唯は女の子達の視線が気になって仕方なかった。

和磨が女の子達の方を振り返り、何かを言おうとした時、

「みんな来てくれるのは嬉しいんだけど、

 弾き飛ばされる子もいるから気をつけてあげてね。」

和磨が口を開くよりも先に拓未がやさしい口調でそう言った。

女の子達は唯に謝る子もいれば、何かヒソヒソ話している子もいる。

和磨はまだ何か言いたそうな顔をしていた。

「ここでおまえが何か言ったら、余計唯ちゃんが気まずくなるだけだぞ。」

拓未はそう耳打ちし、和磨を制した。

確かにそうだ。

和磨は唇を噛み締めた。

「唯、ちょっと膝を擦りむいたみたいだから、保健室に絆創膏もらいに行くね。」

そう言って香奈は踵を返す瞬間、誰かを一瞥し、唯を連れて行った。

(上木さん・・・今、誰を見たんだ?)

 



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