言葉のかわりに−第二章・8−

 

 

保健室に行き、擦りむいた膝を消毒してもらい絆創膏を貼ってもらった。

「・・・唯、さっきの・・・突き飛ばされたんでしょ?」

手当てを終えたところで徐に香奈が口を開いた。

「え・・・。」

「見えてた。」

「・・・。」

香奈からは誰が唯を突き飛ばしたのか見えていたようだ。

「なんでなんにも文句言わないの?」

「だって・・・Juliusのファンの子だし・・・。」

「ファンだからって何をやってもいいって事はないでしょ?」

「そうだけど・・・。」

「・・・もしかして、唯が篠原くんと付き合ってるのを

 公にしたくないのもファンの子の手前?」

「・・・。」

唯は黙り込み、香奈から視線を外すように俯いた。

確かにそれもある。

だが、理由はもう一つあった・・・。

香奈が何かを言おうと口を開いた時、和磨が保健室に入ってきた。

「唯。」

名前を呼ばれ、唯がハッと顔をあげると和磨が目の前に立っていた。

「か、かず君!?」

「膝、大丈夫か?」

和磨は唯の顔を心配そうに覗き込んだ。

「うん・・・それよりファンの子は・・・?」

「ファンより唯の方が大事。」

「で、でも・・・。」

そう言って唯はまた俯いてしまった。

以前の和磨ならもちろんこんな事はなかった。

転んで膝を擦りむいたくらいでは、心配もしないし、

こうしてわざわざ来ることもなかったのだ。

 

和磨は黙り込んでしまった唯をじっと見つめていたが、

不意に何かを思い出し、

「そういえば上木さん、さっき唯を保健室に連れて行く時、誰の事見たの?」

と言って香奈に視線を向けた。

「・・・。」

香奈は無言のまま唯の方をちらりと見た。

唯は言わないでくれと小さく首を振っている。

(香奈・・・お願い、言わないで・・・。)

そこへ今度は拓未が入って来た。

「唯ちゃん、膝大丈夫?」

「あ・・・、う、うん。」

拓未は唯の膝に貼られた絆創膏を見ると、

「・・・絆創膏一枚で済んでるみたいだし、大事ないみたいだね。」

と、安心したように微笑んだ。

「も、望月くん、あの・・・ファンの子は?」

「あ、もうどっかに行ったよ。」

拓未はにっこり笑った。

それを聞いた香奈は、

「んじゃ、拓未、模擬店巡り行こう!」

そう言って拓未の腕を取り、スタスタと保健室を出て行った。

 



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