言葉のかわりに−第一章・21−

 

 

次の週末の土曜日。

夕方、Juliusのメンバー四人でスタジオでの練習とミーティングを終え、

ファーストフードに入ると香奈がいた。

「香奈、おまたせー。」

拓未がそう言いながら近寄っていく。

「「拓未、新しい彼女?」」

准と智也はそう言いながら拓未の後をついて行く。

和磨も無言のまま軽く手をあげ、香奈に近寄った。

「そそ、彼女。」

拓未がニッと笑った。

「上木香奈です。よろしくー!」

にっこりと笑いながら香奈は自己紹介した。

「ベースの小川准。よろしく。」

「ドラムの早坂智也。よろしくねー。」

准と智也もそれぞれ自己紹介した。

「おまえら・・・いつの間に・・・。」

俺は半分呆れながらそう呟いた。

(てか、神崎さんを置いて帰ったのもそれでか・・・。)

謎が解けた。

「唯ちゃんが先に帰って、その後おまえも拗ねて帰った日。」

拓未はニヤニヤしながら答えた。

「だから拗ねてねぇって!」

「ちなみに唯は今レッスン中。」

香奈は聞かれないうちからニヤニヤしながら言う。

こーゆーとこは二人とも似ているのかもしれない。

(・・・ん?・・・レッスン?

 もしかして、ライブ来てくれた時は休んだのかな?)

「・・・レッスンて、いつも土曜日なの?」

俺と同じ事を思ったのか拓未が香奈に聞いた。

「ううん。いつもは木曜日、明日演奏会があるから今日は特別レッスンらしいよー。」

「唯ちゃんの演奏会!?」

「うん、正確には唯の通ってる音楽教室の演奏会。」

「へぇー。そうなんだー。」

「今回は唯がトリを任されたらしいよー。」

「おぉっ!すごいじゃん!」

(へぇー、見てみたいな。)

「香奈、見に行くんだろ?」

「もちろん。」

「俺もいく!」

(なにっ!?)

「じゃ、明日一緒にいこ!」

「うんうん!」

(俺も見たいな・・・。)

そんな事を思っていると、

「おまえも来るだろ?」

拓未が有無を言わさぬ顔で俺に聞いてきた。

おまえはどうする?とか、一緒に行かない?とか

逃げ道のある聞き方をして来なかったのは、ありがたかった。

さすがに小学校の頃からのつきあいともなるとこういう場合、

俺が照れて行かないと答えてしまうのがわかっているからだろう。

拓未のそーゆートコは嫌いじゃない。

俺は黙ってコクコクと頷いた。

拓未はニッと笑って、俺と香奈に

「んじゃ、明日三人で見に行こう。」と言った。

 

その後、話の流れでなぜか准と智也も一緒に見に行くことになった。

(なんでだ・・・?なんでコイツらまで・・・。)

「和磨が気になってるっていう女の子を見てみたい!」

「今まで和磨が気になる子なんていなかったしな。」

准と智也はそんな事を言いながら俺を見た。

(そーゆーコトか・・・。)

「・・・べ、別に気になってる、ワケじゃ・・・。」

視線を外してやっと出た言葉がこれだ。

こんなんじゃバレバレだな・・・。

俺はため息をついた。

「まぁまぁ、それより拓未と篠原くん、明日みんなで行くことは唯には内緒ね。」

香奈のナイスな話題変換に救われた。

「うん?なんでだ?」

「唯はああ見えて本番に強いタイプだから心配ないとは思うけど、

 Juliusのメンバーが全員来るなんて言ったらさすがに動揺するだろうし。」

「そうか?」

「うん、この間のライブで唯もJuliusのファンになったみたいだしね。」

(え・・・?)

「おおっ!マジ?」

「マジ、マジ!」

「あ、そう言えば俺、結局唯ちゃんの感想聞いてねぇ。」

「私、ライブが終わった後に感想聞いたけど、唯にしては珍しくテンション高くて

 ベラベラしゃべってたよー。」

(あの神崎さんが・・・?)

「へー、唯ちゃんがねぇ・・・。」

「またJuliusのライブ行きたいって言ってたし。」

(・・・っ!)

「「「「おおぉっ!やった!」」」」

俺達四人はまたファンが一人増えた事を喜んだ。

「というワケで・・・明日は演奏が終わってから唯の楽屋に突撃!サプライズ作戦!」

 



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