言葉のかわりに−第一章・24−

 

 

「・・・な、・・・なっ、・・・な、んで?」

唯は自分の目を疑った。

目の前には、自分の演奏を聞いてくれているはずがないと思っていた人物、

和磨がいる。

そして何より、彼以外のJuliusのメンバーがいたからだ。

「か、香奈ぁ〜っ?」

唯は少々情けない声で、弱々しく香奈に話しかけた。

「ふふん、びっくりした?」

香奈は悪戯っぽい笑顔を浮かべながら言った。

「・・・。」

唯はまだ固まったままだ。

「唯ちゃん、お疲れ!」

そう言って拓未が話しかけると、ようやく反応しはじめた。

「び、びっくりしたぁ〜っ。まさか、みんなで来てくれるとは思わなかったよ。」

唯は少し照れながら嬉しそうに言った。

「「サプライズ大成功っ!!」」

香奈と拓未はハイタッチした。

 

唯と香奈、そしてJuliusのメンバーは一緒に食事をして帰ることになった。

「俺、ベースの小川准。よろしく!」

「ドラムの早坂智也。よろしくねー。」

准と智也が自己紹介した後、

「神崎唯です。よろしくね。」と唯も自己紹介した。

「唯、今回もすごくよかったよー。」

「そ、そぉ?」

香奈に褒められ、唯は少し顔を赤くした。

「うんうん!一曲目なんて迫力あったし!」

「てか、二曲目もすごい聞いてて気持ちよかった!」

「俺、唯ちゃんのファンになった!」

「俺も!」

みんながそれぞれ褒めちぎる中、唯はどんどん顔を真っ赤にしていった。

その様子を見ていた和磨がクスリと笑い、

「俺は大ファンになったけど?」

と言った。

(え・・・?)

その言葉に一同みんなびっくりしていた。

あの和磨があんな事を言うなんて・・・!

もちろん一番びっくりしていたのは唯だ。

最高潮に顔を赤くして俯いた。

顔の火照りが少しひいた頃、唯はやっと顔をあげ和磨と視線をあわせることができた。

和磨が優しく微笑みながら唯をみつめていた。

それがまた嬉しくもあり、恥ずかしくもあり、3秒もたたないうちに

唯はまた視線を外してしまった。

(ど、どうしよう・・・篠原くんの顔、見れないよぉ・・・。)

そんな事を思い、唯が俯いたままでいると、

「和磨?」

不意に誰かに呼ばれ、和磨が声の主へと視線を移した。

唯もその人物へと視線を移す。

モデル並みにスタイルの良い綺麗な女の子が立っていた。

(わぁ・・・綺麗な人・・・。)

唯は和磨をちらりと横目で見た。

和磨はその女の子を見た途端、一瞬にして冷たい表情へと変化した。

さっきまで唯に向けられていた優しい微笑みは嘘のように消え、

ただ冷たいばかりの表情がその女の子に向けられていた。

(篠原くんがこんな冷たい表情するなんて・・・。)

唯は今まで自分が見たことのない表情をしている和磨から思わず視線を外した。

「・・・エリ。」

冷めた目線のまま和磨がその女の子の名前を口にし、

「なんの用だ?」

いつもより低いトーンで続ける。

“エリ”と呼ばれた女の子はくすりと笑うと、

「相変わらず、冷たいわねー。」

そう言って和磨をじっと見つめた。

「・・・。」

「久しぶりに会ったって言うのに。」

「なんの用だと聞いたんだが?」

和磨は少し苛立ち、エリを睨みつけた。

エリは臆する事無く「ただ、久しぶりに会ったから、話がしたくて声を掛けただけよ。」

そう言ってにっこり笑った。

「話すことなんか何もない。」

和磨はさらに冷たくそう言い放った。

さすがにエリからは笑みが消え、

「そう、お邪魔したわね。」

そう言って和磨の隣に座っている唯を一瞥して踵を返した。

(今の・・・誰なんだろう・・・?)

(それに篠原くんのあの冷たい態度・・・。)

(・・・けど呼び捨てにしてたって事は、かなり親しい仲?・・・彼女?)

唯が俯いたままいろいろ考えていると、丁度料理が運ばれてきた。

 

料理が運ばれてきたのを切欠に、香奈と拓未がうまく話を盛り上げてくれた。

そのおかげで、和磨もいつも唯が見ている表情に戻っていた。

 

店を出る前、唯が化粧室に入るとエリがいた。

(あ・・・。)

 



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