言葉のかわりに−第一章・27−

 

 

唯と香奈はJuliusのメンバー四人と別れ、

ゆっくりとした足取りで唯の家に向かって歩き出した。

和磨達の姿が見えなくなった途端、和磨の前では泣くまいと我慢していた唯が、

堰を切ったようにポロポロと涙を流して泣き始めた。

香奈は「唯・・・よく頑張ったね。」と頭を撫でた。

唯はどうして自分が泣いてるのかよくわからなかった。

ただ涙が溢れ出してくる・・・。

どうして・・・?

なんでこんなに涙が出てくるの・・・?

「香奈・・・私、なんで、こんなに涙が出るのかな・・・?」

「悲しいからでしょ・・・?」

「別に、悲しくなんか・・・ないよ?」

「じゃ、悔しい・・・とか。」

「悔しく・・・ない、と、思う。」

「じゃ・・・さ、あのエリって子に文句言われた時、なんて思った?」

「・・・びっくり、した・・・かな?」

「それだけ?」

「・・・。」

・・・多分。

「唯は・・・篠原くんの事、どう思ってるの?好きとか、嫌いとか。」

「どう、って・・・。」

「嫌い・・・ではないよね?」

「うん。」

(そりゃ優しいし・・・。)

「じゃ、好き?」

好き・・・?

好きなんだろうか・・・?

正直、篠原くんの事はほとんど何も知らない・・・。

知ってるのは、携帯の番号とメールアドレス。

歌が上手くて、ギターが上手くて・・・。

後は、すごく優しい事・・・。

たった、それだけ・・・。

それだけだから、好きかどうかなんてわからない・・・。

「・・・わかん、ない・・・。」

「・・・あの子が言った事、信じる?」

「それは・・・。」

私は・・・どっちを信じる?

私の前では優しい・・・でも・・・。

あの子を見る篠原くんは、私の知らない冷たい表情をしていた。

冷たい言い方・・・冷たい態度・・・。

もし・・・もしもあれがホントの彼だとしたら・・・?

“和磨にからかわれてるって事。”

“和磨がやさしくするのは今だけよ。”

あの子の言葉が頭の中をぐるぐる回る。

だけど私は・・・あの子よりも篠原くんを信じたい・・・。

でも・・・。

香奈の質問にまともな答えが返せないまま、俯いて歩いていると、

「今日はもう早く寝なよ?」

そう言って、香奈がまだ泣き止まないでいる私の背中を優しく撫でてくれた。

「うん・・・。」

その言葉に、香奈の手の暖かさにまた涙が出てきた・・・。

 

家に戻った唯は、ベッドの中で目を閉じて和磨の事を考えていた。

“和磨にからかわれてるって事。”

あの子が言った言葉がまた脳裏を掠めた。

私はからかわれているの・・・?

“和磨がやさしくするのは今だけよ。”

私をからかうのに飽きたら冷たくなるって事?

確かに・・・学校で1番人気じゃないかと思えるほどの篠原くんが

私なんかに優しくしてくれるのは何故だろう・・・?

ファンの子達に囲まれてる時もあんまり愛想が良くないみたいだし・・・。

あの子に向けられたような冷たい表情を彼がする事も知らなかった。

あんな冷たい言い方をする事も・・・。

私の知っている篠原くんは初めて会ったときから、ずっと優しい。

けど・・・あの子には冷たかった。

別人のように・・・。

どうしてだろう・・・?

それに・・・あの子は篠原くんの彼女・・・。

私は、ただの友達・・・。

そうだ・・・、ただの友達でしかないのだ。

そう思うと胸が苦しくなるのはどうしてだろう・・・?

友達には優しくて、彼女には冷たいの?

普通、逆じゃない?

ワケガワカリマセン・・・。

やっぱり・・・私、からかわれてるだけなのかな・・・?

 



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