言葉のかわりに−第一章・4−
唯と和磨たちは、香奈の提案でファーストフードに寄って帰ることになった。
唯の横に和磨、そしてその向かいに和磨の友達と香奈が座った。
(これじゃ、どっからどぉ見てもダブルデートの図じゃない?)
唯がそんなことを思っていると、香奈が口を開いた。
「ねぇ、もしかして篠原くんて、JuliusのKazumaくん?」
「え?あ、うん。そうだけど・・・。」
「わぁっ!やっぱりそーなんだっ
てことは、私の隣にいるのってTakumiくん?」
「え?俺の事も知ってんの?」
「うん!だって私Takumiくんのファンだもん♪
さっきからずっと似てるなぁって思ってたのよ。」
「へぇーっ嬉しいなぁ。あ、自己紹介遅れたけど、俺、望月拓未、よろしく。」
「私、上木香奈、よろしくね。」
「で、唯ちゃんは俺らメンバーの中で誰のファンなの?」
拓未にニコニコしながらそう聞かれ、唯は返事に詰まった。
(い、言えない・・・。Juliusていうバンド自体しらないなんて・・・。)
「え、えーと・・・。」
唯が困っていると香奈が助け舟を出してくれた。
「あははっ。ごめん、私の教育が悪くて唯はまだJuliusのこと知らないの。」
そう言いながら舌をぺろっと出した。
「そーなんだ、じゃ今度ライブあるからよかったら来て?」
拓未にそう言われ、
「じゃ唯、今度一緒に行こう。」
香奈にもそう言われ、唯はとりあえず「うん。」と答えた。
「やったーっ!二人確保。」
拓未は嬉しそうに言いながら香奈と唯に握手を求めてきた。
香奈は拓未と握手をした手をブンブンと大きく振っている。
唯はそんな二人を見てクスクスと笑いながら差し出されたもう片方の拓未の手と握手した。
和磨もそんな三人がおかしく見えたのか、笑っている。
それから四人はバンドの話や学校の話で盛り上がり、お互い携帯番号やメールアドレスを交換した。
夜、唯がいつものようにベッドで本を読んでいると携帯が鳴った。
和磨からだ。
「もしもし。」
『もしもし、あ、えっと・・・和磨だけど。』
着信表示でわかっているものの、唯は少しどきっとした。
「あ、うん。」
『明日、朝迎えに行くって言うの忘れたから、いつも何時ごろ家でてる?』
「え?あ、いいよ、そんな篠原くん大変でしょ?」
『大丈夫だよ。それに怪我させちゃったの俺なんだし。』
「たいしたことないから別に気にしなくていいのに・・・。」
『・・・やっぱ、俺が迎えに行くと迷惑?』
「そ、そんな事ない!」
『じゃ、何時に家出るか教えて?』
「え、えっと・・・7時45分。」
『ん、じゃ7時45分に家の前で待ってる。』
「う、うん・・・。あ、あの・・・ありがとう。」
『い、いや・・・これくらい当たり前だし・・・。』
「・・・。」
(やばい・・・。な、なにか言わなきゃ・・・。)
『・・・。』
(なに話したらいいのかわかんないよぉっっ。)
「そ、それじゃあ・・・おやすみなさい。」
『う、うん、おやすみ。』
(結局、切ってしまった・・・。)
唯は少しへこみながら携帯を持ったまま、まだ耳に残る和磨の声を思い出していた。
(初めて聞いた時からずっと思っていたけど、篠原くんて声もいいのよね・・・。)
艶っぽさがあってそれでいて甘すぎず、携帯越しだったが耳元で聞くと
いつまでも聞いていたいと思えるほどだ。
唯は携帯を充電器に置くと、読んでいた本をパタンと閉じ、眠りについた。
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