言葉のかわりに−番外編・花火大会2−
次の日、拓未の家でさっそく曲作りがはじまった。
お互い普段から書き溜めておいた曲や詞を並べ、
形にできそうなものから手をつけていく。
まだ荒削りだが、なんとか1曲、形になったところで休憩することにした。
「なぁ、拓未。」
「んぁ?」
「おまえら会う時間あるのか?」
和磨は自分と同じ様な予定が入っているであろう拓未に聞いてみた。
「はぁ?」
拓未が何を言い出すんだ?と言わんばかりの顔をする。
「いや、だから上木さんと。」
「香奈と?」
「うん、おまえもバイトとかはいってんだろ?」
「そりゃまー、はいってるけど?」
「バンドの練習だってあるし。」
「あるねぇー。」
「こうやって俺と曲作りもあるし。」
「だな。」
「そんなんで会う時間あるのか?」
「そりゃ、さすがに毎日は無理。香奈にも予定があるし。」
「んじゃ、会えないのか?」
「まぁー、夏休みだからと言って一日中は無理でも3日に一度くらいは
なんだかんだ言っても会えるし。」
「そんなに?」
「てゆーか、別に無理して会わなくてもいいだろ。」
「おまえは会えなくても平気なのか?」
「平気?・・・というか、会うだけが全てじゃないしな。」
「というと?」
「いろいろデートの為のリサーチとか。」
「なるほど・・・な。」
「だいたい、会えなきゃ会えないでメールとか電話すりゃいいんだし。」
「まぁ・・・な。」
それはそうだ。
「唯ちゃんとなんかあったのか?」
拓未はすっかりお見通しみたいな顔をする。
「・・・。」
「そんな恋愛初心者みたいな事言い出すからには、なんかあったんだろ?」
「なっ・・・!?恋愛初心者って・・・」
「何があったんだ?」
「まぁ・・・たいした事じゃねぇけど。」
「けど・・・おまえとってはたいした事なんだろ?」
その通りだ。
「・・・唯とさ・・・、会えないんだよ。」
「なんで?」
「俺の予定と唯の予定が見事にすれ違ってて・・・。」
「メールすりゃいいじゃん。」
「唯からは用事がない限りメールは来ないし、俺からしても返事が来るのは寝る前なんだよ。」
「んじゃ、電話は?」
「電話も同じ。唯からは掛けてこないし、俺から掛けても出ないことがほとんど。」
「つまり、昔おまえが女にしてた事をやられてるワケだ?」
「・・・っ!」
そうだった・・・。
確かに俺はそんな付き合いばかりしてきた。
何か用事がない限り、俺からはメールも電話もしなかったし、
女のほうからメールをしてきても返さない事も、電話にでない事もあった。
俺はつくづくひどい男だったんだな・・・と思う。
いやでも、それは好きじゃなかったからだし・・・。
ん?
て・・・ことは、やっぱり・・・
唯は俺の事を好きじゃないからなのか?
どうでもいいから、メールも電話もしてこないのだろうか・・・?
そんな事を考えていると、
「これに唯ちゃん誘って愛を深めてみれば?」
そう言って拓未が何かの雑誌のページを俺に見せた。
「・・・?」
拓未が見せてくれたページには、大きく“花火大会”の文字。
「花火大会?」
「そそ、やっぱ夏はこれだろ!」
「おまえらも行くのか?」
「当然!」
俺はスケジュール帳をだして自分の予定を確認した。
花火大会は、8月18日・・・土曜日か。
とりあえず空いている。
俺はスケジュール帳に花火大会の開催予定日時と場所を書き写した。
後は・・・唯次第か・・・。
夜、俺は唯に電話をした。
だけど何度コールしても出ない。
(何やってんだろ?)
30分後、もう一度電話をしてみた。
今度は数回コールの後に唯の声がした。
『もしもし。』
「もしもし・・・俺。」
『あ、うん。』
「なんかしてた?」
『譜読みしてた。』
「コンクールの曲?」
『うん。』
「そっか・・・。あ、それでさ。」
『うん。』
「唯、8月18日の土曜日って空いてる?」
『んと・・・ちょっと待って。』
電話の向こうで唯がスケジュール帳をめくる音がする。
どうか空いてますように・・・。
俺は祈るような気持ちで返事を待つ。
『空いてるよー。』
(やった!!)
「マジ?んじゃ絶対、空けといて!」
『え?うん、いいけど・・・何かあるの?』
「花火大会。」
『花火大会?』
「そそ、一緒に行こう。」
『うん!』
電話の向こうで嬉しそうな声がした。
それから、他愛のない話を少しだけして電話を切った。
唯と花火大会・・・!
「よっしゃ!」
俺はガッツポーズをした。
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