言葉のかわりに−番外編・花火大会5−
その日の夕方から俺はまた夜9時までバイトが入っていた。
そろそろ、9時・・・と言うときに店長がきた。
「篠原くーん、お疲れ!」
そう言ってなにやら怪しい笑顔を俺に向ける。
(う・・・、この笑顔・・・やな予感するなー。)
「・・・お疲れ様です。」
(いったい何を言い出すやら・・・。)
「ちょっと相談なんだけどー・・・」
(ほらきた。)
「篠原くんさ、18日って夕方から空いてない?」
(18日だぁ〜っ?)
(花火大会の日じゃねぇかよっ!)
「空いてません。」
「7時からでいいんだけど。」
(ちょうど花火大会が始まる時間だよ!)
「予定があります。」
「そこをなんとか・・・。」
「無理です。」
「どうしても?」
「どうしても。」
「この日だけ時給100円増し!」
ぴくっ。
(金で釣る気かよ・・・。)
「・・・無理です。」
「えー、じゃ・・・篠原くんは諦めるか。」
(そうしてくれ。)
「気が変わったら、言ってね。」
じゃーねっ・・・と言って、店長は去っていった。
(気なんか変わらねぇよ!)
バイトが終わり、自分の部屋に戻ってから曲を作っていると
珍しく唯から電話がかかってきた。
「もしもし。」
『・・・あ、もしもし・・・。』
なんとなく元気がないな。
「唯?」
『・・・うん。』
「なんかあったのか?」
『えっと・・・、あのね・・・』
「うん。」
『・・・花火大会・・・行けなくなっちゃった・・・。』
(え・・・。)
「・・・。」
(マジかよ・・・。)
『・・・ごめんね。』
「なんで・・・」
『・・・。』
「なんでだ?」
『・・・レッスンが入ったの・・・。』
「・・・そっか。」
『・・・ごめんね。』
「いいって、レッスンなら仕方ない。」
ホントは全然よくない。
『・・・。』
「・・・。」
『・・・。』
「・・・。」
やたらと重苦しい沈黙・・・。
『・・・ごめんね・・・』
「じゃ、またな。」
唯がごめんねの後に何かを言いかけたけど、
俺はその言葉を遮った。
『・・・うん。』
せっかく唯から電話がかかってきたのに、切ってしまった・・・。
しかも、超気まずいままで・・・。
本当はここでなんかの話題にすりかえて
笑って電話を切れればよかったんだろうけど。
レッスンだから仕方がない・・・。
それはわかってる。
わかってるけど、結局不貞腐れてさっさと電話を切ってしまった。
このまま話していると、きっともっと悪態をついてしまう気がしたから・・・。
唯・・・泣きそうな声だった。
本当は唯だって・・・。
次の日、俺は店長に気が変わりましたと電話をした。
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