言葉のかわりに−番外編・花火大会6−

 

 

唯は和磨から電話を切られ、そのまま携帯を握り締めていた。

(篠原くん・・・きっと怒っただろうな・・・。)

どうしよう・・・。

もう口も利いてくれないかも・・・。

そんな考えが頭の中をぐるぐる駆け巡る。

 

しばらくして香奈から電話がかかってきた。

握り締めたままだった携帯を慌てて開く。

「も、もしもし。」

『あ、もしもし唯?』

「うん・・・。」

『18日の花火大会の事なんだけど、唯と篠原くんも行くんでしょ?』

「・・・あ、あのね香奈・・・その事なんだけど・・・」

『ん?どうかしたの?』

「それが・・・、行けなくなっちゃったの・・・。」

『えー!なんでぇ?』

「レッスンがはいっちゃった・・・。」

『そう・・・、篠原くんにはもう言ったの?』

「うん・・・なんか、すごく怒ってるみたいだった・・・。」

『そっか・・・。』

「ど、どうしよう・・・香奈・・・。」

唯はとうとう泣き出してしまった。

『ちょっ、唯泣かないで・・・。』

「・・・だって、もう篠原くん、口、利いてくれない、かも・・・。」

『そんな事ないよ、大丈夫だから。』

「どうしよう・・・。」

『きっと篠原くんもわかってくれてるって。』

「・・・でも、多分・・・きっと、怒ってるもん。」

『そりゃ、篠原くんも楽しみにしてたみたいだから残念だとは思うけど・・・。』

「・・・やっぱり、もう、口利いてくれないよぉ・・・。」

唯はすっかり弱気だ。

『じゃあ、もしこれが逆で篠原くんがバンドの練習とか入ったりしたら、

 唯は、怒る?篠原くんの事許せない?』

「そんなこと、ないよ・・・。」

『どうして?』

「だって、篠原くんは、バンドを本気で、やってるから。」

『じゃあ、篠原くんだって同じだよ。』

「そう、かな・・・?」

『そうだよ、怒ってたとしても口利いてくれないなんてことはないよ。』

「そう、だといいけど・・・。」

『それに花火大会は18日だけじゃないんだし、他にもあるよ?』

「・・・でも、会える日がないかも・・・。」

『うーん・・・。』

「それにまた約束して、レッスンがはいっちゃったら・・・。」

『あ、あの・・・唯。』

「ど、どうしよう・・・。」

これでは話が堂々巡りだ・・・。

 

結局、この後も香奈は一時間以上に渡って唯を慰め続けるハメになった・・・。

 

次の日、唯は花火大会の情報をインターネットで検索してみた。

確かに香奈の言ったとおり、18日以外の日もいろんな所であるみたいだ。

唯はスケジュール帳を開き、自分の予定と見比べる。

8月25日の土曜日。

この日なら唯の予定もなく、行けそうだ。

でも、和磨の予定が空いているとは限らない。

それに空いていたとしても、またレッスンがはいったら・・・。

それ以前に怒ってて口を利いてくれないかもしれないし・・・。

昨夜、香奈に慰めてもらったばかりだが、そう思うと

やっぱり和磨に電話できないでいた・・・。

 



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