言葉のかわりに−番外編・花火大会7−

 

 

数日後、和磨の家に拓未が来ていつものように曲作りをしていた。

曲がなかなかいいペースでどんどん形になっていったおかげで、

夏休みに入ってから10曲以上新曲ができた。

「思ったより数ができたな。」

拓未が満足そうに言う。

「あぁ、そうだな。」

和磨も満足そうに笑った。

「ところで、和磨。」

「ん?」

「唯ちゃんと花火大会行けなくなったって?」

「・・・。」

和磨の顔から一瞬にして笑みが消えた。

「またまた昔、おまえが女にしてた事・・・だな。」

「・・・言うな。」

和磨は眉間にしわを寄せた。

・・・そうだよ。

俺だって昔よくやってた事だ。

女との約束が入っていたって、バンドの練習なんかは最優先してた。

「唯ちゃん、大泣きしてたらしいぞ。」

「えっ!」

和磨は驚いた表情のまま固まった。

「ちょうど、おまえと電話を切った後に香奈がかけたらしくてさ。」

「・・・。」

「どうもおまえを怒らせたと思ったらしくて、

 もう口を利いてくれないんじゃないかって。」

「・・・。」

確かに、あの時・・・俺は怒ってた。

仕方がない・・・。

そう思っていても、感情が思いっきり声にでていたのだろう。

唯はそれを感じ取っていたのか・・・。

「おまえだって、仕方ないことだってわかってんだろ?」

「あぁ・・・。」

「まぁ・・・、気持ちはわからんでもないが。」

「・・・。」

「香奈がさ、18日だけじゃなくて他の日も花火大会はあるからって言っても、

 もし、また約束してレッスンが入ったら・・・とか、そんな事気にしてたらしい。」

「え・・・。」

「このままじゃ、唯ちゃんからは絶対連絡こないぞ?」

「そう、だな・・・。」

「まあ、がんばれ。恋愛初心者よ。」

拓未はそう言って和磨の肩をポンと軽く叩いた。

「恋愛初心者言うな・・・。」

和磨はそう言って怒ってはみたものの、拓未は笑っていた。

 

その日の夜、思い切って俺は唯に電話をかけた。

何回コールしてもなかなかでない。

また後で掛けなおそうかと思っていた時、

『も、もしもし・・・。』

少し躊躇しながら唯が電話にでた。

「あ・・・俺。」

『う、うん・・・。』

「・・・。」

『・・・。』

電話をしてみたものの、なんて切り出せばいいのかわからない。

「あの・・・さ。」

『・・・うん。』

「えーと・・・この間は・・・その・・・ごめん。」

『・・・え?』

「怒ったりして・・・。」

『ううん、約束破った私が悪いんだし・・・。』

「それは違うよ。」

『・・・どうして?』

「そりゃ、確かに一緒に花火大会行けなくなったのは残念だけど、

 レッスンが入るのは仕方ないことだろ?」

『でも・・・』

「俺、まだ唯のピアノ一回しか聴いたことないけど、でも・・・

 唯のピアノが好きだから。」

『え・・・。』

「だから・・・、ピアノ頑張ってほしい。」

『・・・っ。』

「唯・・・?」

『篠原く・・・』

(やべぇ・・・泣かせちゃった・・・。)

『・・・ありがと。』

「何言ってんだよ、それに・・・」

『・・・?』

「それに・・・俺もバンドの事とかで約束破ること、あるかもしれない。」

絶対ない・・・とは言い切れない。

他のメンバーとのスケジュールの調整なんかで誰かが折れないといけない時もあるからだ。

『うん・・・。』

「だから、こういう事があっても今度から気にするなよ?」

『・・・。』

「それともう一つ・・・俺は唯の大ファンだから。

 こーゆーの気にしてもらっちゃ困るんだよ。」

『・・・え。』

「あれ冗談だと思ってた?」

『う、うん。』

「俺、嘘はつかないって言っただろ?」

『うん。』

「ん。・・・じゃ、今度から気にするなよ?」

『・・・うん。』

うん。とは言ったものの、きっと同じ様なことがあれば気にするんだろうな。

「それとさ・・・」

俺は目の前のノートパソコンに視線を移した。

『ん?』

さっきネットで調べた花火大会の情報サイトで行けそうな日を探す。

「8月25日は空いてる?」

『うん、・・・あ・・・花火大会?』

「あれ?知ってた?」

『うん、あの次の日にネットで調べてみたの。』

「そっか。」

唯も調べてたのか・・・。

けど、俺が怒ってると思って電話できなかったのかな・・・。

「じゃあ、25日一緒に花火大会行こう。」

『・・・。』

「またレッスン入ったっていいから。」

『え・・・で、でも。』

「さっき言ったろ?気にするなって。」

『・・・う、うん。』

「よし!んじゃ、約束。」

『・・・うん!』

「あ、そだ・・・後さ・・・」

『・・・?』

「この間の登校日の時、せっかく教室まで来てくれたのに・・・ごめんな。」

『あ、ううん。』

「起こしてくれればよかったのに。」

『んー、だってあんまり気持ち良さそうに寝てたからー。』

「たしかに爆睡してたかも。」

『あはは、やっぱり。』

「唯に会いたかったな。」

『私は会えたもん。寝顔もバッチリ見れたし。』

唯は電話の向こうでクスクスと笑っている。

「あ、それズルい!」

俺はわざと大袈裟に言った。

 

それから俺達はしばらく他愛のない話をして電話を切った。

唯と仲直りできた。

よかった・・・。

そういえば・・・ゆっくり話をしたのも久しぶりだったな。

25日は絶対なんにも予定がはいりませんように・・・っ!

 



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