言葉のかわりに−番外編・ホワイトデー 1−

 

 

―――3月10日。

今日は唯達が通う高校の卒業式だった。

 

卒業式が終わり、午前中で学校が終わった後、

和磨が久しぶりに唯とゆっくり話ができると思い、

一緒に帰ろうといそいそと帰り支度をしていると、

唯からメールが届いた。

 

−−−

今日は先に帰るね。

−−−

 

(えー。)

 

和磨は密かにショックを受けた。

 

(マジかよー。)

 

ちょっとだけ不機嫌な顔になった和磨に

「どうした?唯ちゃんに振られたか?」

と拓未が話しかけてきた。

 

(まったくコイツは時々、神経を逆撫でする様な事を言いやがる・・・。)

 

和磨はムスッとしたまま拓未を睨みつけた。

「うはっ、図星!?」

拓未はそう言うとそそくさと香奈と一緒に帰って行った。

 

 

それから2,3日、唯はずっと一人で先に帰っていた。

しかも、和磨が唯の教室に行こうものなら、

避ける様になんだかんだと言って唯は教室を出て行く。

 

(なんで・・・?)

 

和磨は自分が何かしたのかと思い、

夜も電話をかけてみたが、唯が出ることはなかった。

 

おかしい。

絶対におかしい・・・。

 

 

そして春休みもいよいよ間近に迫った14日、

またまた女の子にとってドキドキするイベントの日。

1ヶ月前にチョコを渡した相手から

返事が返ってくるホワイト・デー。

和磨と拓未は例によって朝っぱらからファンの子達に囲まれていた。

皆、もしかしたらお返しがくるかと期待してくるのだ。

しかし当然のごとく、和磨はファンの子にはお返しなどはしない。

今まで“彼女”にもしなかったくらいだ。

和磨がお返しをするのはただ一人・・・唯だけだ。

 

 

昼休み、和磨は女の子達に囲まれる前に唯の教室へ行った。

しかし、唯の姿が見当たらない。

 

(音楽室か・・・?)

 

和磨はクラスメイトと話している香奈に近づき、

「唯は?」

と聞いた。

 

「あ、今日休み。」

 

「えっ!?なんで?」

和磨は唯からは何も聞いていなかった。

 

(演奏会のリハーサルかな?)

 

唯は約一ヵ月後に大きな演奏会がある。

去年の12月に出場したコンクールの上位入賞者による演奏会だ。

その為、最近はずっと練習とリハーサルで忙しい。

それに、この間は取材や撮影なんかもあったらしい。

和磨はてっきり演奏会の事で休んだのだと思っていると、

「風邪でダウンしたっぽいよー?」

と香奈の口から意外な事実が語られた。

 

(・・・へ?)

 

「風邪?」

 

「うん、4,5日前からなんか調子悪そうだったし。

 てか、篠原くん気がつかなかった?」

 

香奈にそう言われ、改めて唯の様子を思い出す。

言われて見れば、なんだか辛そうだった気がしないでもない。

 

「まぁ、とは言え唯は篠原くんに風邪をうつすまいと

 必死で避けてたみたいだったしね。」

 

「え・・・。」

 

(確かに避けてた・・・。

 俺が近づこうとすると逃げるようにどこかに行ってたし。

 あれは俺に風邪をうつさないようにする為・・・?)

 

「今週末、Juliusのライブでしょ?」

 

「あぁ。」

 

「ヴォーカリストにライブ前に風邪うつしちゃ

 洒落になんないと思ったんじゃない?」

 

「そーゆーコトか・・・。」

 

(なるほど。

 唯らしいな・・・。)

 

 

―――放課後、和磨はなんとかファンの子達を振り切り、

唯の家に行った。

今日は特別な日・・・と言うのもあるが、

なにより唯が心配だった。

 



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