右隣−Prologue−
10年前、私の右隣にはいつも陸がいた。
でも、私はある日その陸の前から姿を消した。
何も言わずに・・・。
だけど・・・
今・・・
目の前に陸がいる・・・
目を閉じたまま・・・。
私・宇田川結子はこの春、10年ぶりに東京に戻ってきた。
10年前、彼・近藤陸の元を離れ、福岡の親戚の家から看護学校へ通い、
そして看護師になった。
その後、そのまま福岡市内の病院で看護師をしていたけれど、
この春、都内の病院に異動になった。
実家から病院に通うには結構時間がかかる為、
私は病院の近くに部屋を借りた。
引越しも一段落して両隣へご挨拶。
左隣の部屋のインターフォンを鳴らすと、中から20歳前後の
男性が出てきた。
男性・・・といっても28歳の私から見れば“可愛い男の子”。
引越しの挨拶をするとにっこりと笑って「こちらこそ、よろしく。」
と言ってくれた。
なかなか感じのいい男の子だった。
次は右隣。
だけどインターフォンを数回鳴らしても中からは誰も出てこない。
留守なのかな?
私はまた後で挨拶に行く事にして自分の部屋に戻った。
それから数時間後にもう一度、次の日にもまた次の日にも
行ってみたけれど中から住人が出て来る事はなかった。
空き部屋なのかな?
だけど不動産屋さんは、今は私が入った部屋しか空いていないって言ってたし・・・
旅行か出張にでも行っているのかもしれない。
私はあまり深く考えないことにした。
数日後、私は脳外科に配属になった。
事故や怪我、病気で脳を損傷した患者さんが集まっている病棟だ。
そして彼は今、この脳外科病棟の個室のベッドで寝ている・・・。
先日、事故に遭い外科病棟に入院。
だけど今日、脳に異常がみられるとかで脳外科に移された。
私はその彼・陸の担当になった。
そして・・・
今・・・
目の前に陸がいる・・・
目を閉じたまま・・・。
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