漆黒の翼 -12-
―――コンコン・・・。
次の日、ユウリが自室で身支度を済ませ、
窓の外を眺めているとドアをノックする音が聞こえた。
「はい。」
ユウリが返事をしてドアを開けると、
そこにはいつもと違う格好をしたラーサーが立っていた。
白い鎧ではなく、白い礼服を着ている。
アクトン型でランディール王国の紋章が二の腕部分に
金糸と銀糸で刺繍されている王国制式のものだ。
そして胸にはいくつかの勲章。
ユウリはその勲章の数でラーサーが騎士団の中でも地位が
高い人物なのだと窺い知る事ができた。
「おはよう、もう支度はできた?」
ラーサーは微笑みながら王国制式の白いローブを着た
ユウリを見つめた。
「おはようございます。
支度の方はできています。」
ユウリは笑顔で答えた。
今日はこれからユウリの王立魔道士隊への入隊式があるのだ。
「よく似合ってるよ、そのローブ。」
ラーサーが柔らかい笑みでそう言うと
ユウリは少し顔を赤くした。
「あ、そういえば言い忘れてたけど
俺の部屋、君の真向かいだから
何かわからない事や聞きたいことがあれば
いつでも来るといい。」
ラーサーはそう言ってユウリの部屋の向かい側のドアを指した。
「はい。」
今はまだこの城の中で頼れるのはラーサーだけだ。
それだけにユウリはラーサーが近くにいると聞いて
安心したように微笑んだ。
「昨日はよく眠れた?」
「あー、いえ・・・なんか、緊張しちゃって・・・。」
「ははは、だろうな・・・そんな顔してる。」
「えっ!?・・・わ、私、そんなに酷い顔してますかっ?」
「いや、酷いとかじゃないけど、なんとなく
寝不足なのかな・・・と思って。」
「・・・ど、どうしよう・・・。」
「そんな気にしなくても大丈夫だぞ?」
「そ、そうですか?」
「あぁ、いつも通り可愛い顔してるよ。」
ユウリはラーサーがさらりと言った言葉にまた顔を赤くした。
入隊式は城の大広間で行われる。
ラーサーはユウリを大広間にいる王立魔道士隊隊長の
アドルフの元に連れて行った後、王立騎士団が
整列している方へと歩いていった。
―――午前11時。
ユウリの王立魔道士隊入隊式が始まった。
宣誓の後、ランディール王から王立魔道士隊の
一員であることを表す紋様が刻まれた指輪が授与され、
ユウリは正式に王立魔道士隊の一員となった。
そしてその後すぐ勲章の授与式が行われた。
先日の騎士団を助けた一件で勲章が贈られることになったのだ。
ユウリは入隊早々、勲章を貰った事で王立魔道士隊の中でも
上位になった。
その後はそのまま城の大広間でパーティが開かれた。
入隊と勲章授与のお祝いだ。
その席でユウリはアドルフから王立魔道士隊の隊員全員と
副隊長のミシェルに紹介され、続けて王立騎士団団長に紹介された。
「こちらが王立騎士団団長のクレマン=デュボワ殿だ。」
「ユウリ=マーシェリーです。」
ユウリがぺこりと頭を下げるとクレマンはにっこりと笑い、
「よろしく。」と言った。
その後、アドルフから王立騎士団の団員達にも紹介された。
「よし、とりあえずこれで一応挨拶回りは済んだから、
後はゆっくりしてて大丈夫だぞ。」
アドルフはそう言うと優しい笑みをユウリ向けた。
「え、あの・・・副団長様へのご挨拶がまだ・・・」
「今さら副団長はいいだろ?」
アドルフはククッと笑った。
「どうしてですか?」
ユウリはその言葉の意味がわからず、
不思議そうな顔をした。
「だって、副団長は君もよく知っている人物だぞ?」
「?」
「なんだ・・・もしかして、ラーサーから聞いていないのか?」
「はい?」
「騎士団の副団長はラーサーだよ。」
「えっ!?」
「ははは、その様子だと本当に何も聞いていなかったみたいだな。」
「ラ、ラーサー様・・・ふ、副団長様だったんですか・・・。」
ユウリはラーサーが王立騎士団の副団長だとわかり驚いたが、
あの胸の勲章の数を思い出し、それも納得できた。
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