漆黒の翼 -3-

 

 

―――それから2日後。

ユウリがキノコ狩りから帰ってくると、

丸太小屋の前にラーサーが立っていた。

 

「・・・ラーサー様っ!?」

ユウリは驚きながらもラーサーに声を掛けた。

 

「ユウリ・・・もう歩けるのか・・・?」

ラーサーはユウリの声に振り返り、ユウリの姿を

認めると驚いたように口を開いた。

 

「あ・・・はい。」

ラーサーが驚いたのも無理はない。

ユウリは一昨日、ラーサーが帰った後、

足の傷を自分の持つ癒しの力で治していたからだ。

 

 

「あんなに深かった傷が・・・」

丸太小屋の中へ案内され、目の前に座ったユウリの足を不思議そうに

ラーサーは見つめた。

 

「と、ところで・・・ラーサー様、どうしてここへ・・・?」

ユウリはラーサーがここへ来る事はもうないだろうと思っていた。

 

「実はあの後、君の事が心配でね。

 本当は城に仕えている宮廷魔術師を連れて来られれば

 よかったんだけど・・・規則で宮廷魔術師を連れ出すことは

 基本的に禁じられてるんだ。

 だから、エリクサーを合成してもらってきた。」

ラーサーはそう言いながらオレンジ色をした液体が入った小瓶を出した。

 

「・・・わざわざ私の為に・・・ですか?」

 

「あぁ、傷も深かったし、治らないことには何もできないだろうと思ってね。

 昨日にでも来たかったんだけど、ちょっと討伐に出ていてね。

 ・・・あ、それと・・・これ、ついでに持ってきたんだ。」

ラーサーはさらにユウリの目の前にパンや果物、野菜、干し肉、魚、卵、

ミルクやチーズ、バターなどたくさんの食材をテーブルに並べた。

 

「こ、こんなに・・・?」

 

「あの足じゃ当分動けなくて困るだろうと思って・・・

 でも、綺麗に治ってるし、妖術師にでも来て貰ったのか?」

 

「え・・・?・・・あ、はい・・・。」

まさか自分で治しました・・・とは言えるはずもない。

 

「そうか・・・それならよかった。」

ラーサーはユウリに安心したように微笑んだ。

 

「すみません・・・いろいろと心配までしていただいて・・・。」

 

「いや、気にする必要はない。

 でも・・・森の中は危ないから気をつけろよ?」

 

「はい・・・ありがとうございました。」

 

「それじゃ。」

ラーサーは静かに立ち上がり、丸太小屋を出た。

ユウリは丸太小屋の前まで出ると、馬に乗って城の方へと去ってゆく

ラーサーの後姿をいつまでも見送っていた。

 

 

「ユウリ様?」

外から帰ってきたジョルジュの声が頭上から聞こえ、

ユウリはハッとした。

 

「どうかされましたか?こんなところボーッとして・・・。」

 

「え?べ、別に・・・ボーッとなんかしてないわよ?」

 

「そうですか?」

ジョルジュはユウリの様子にやや首を傾げながら、

丸太小屋の中へ入っていった。

 

「ユウリ様・・・この食材は一体・・・?」

ジョルジュはテーブルに置かれたたくさんの食材を見て驚いた。

 

「あ、それね・・・先ほどラーサー様がお見えになって、

 持ってきてくださったの。」

 

「ラーサー様が?」

 

「えぇ、なんか・・・私の事を心配してくださっていたみたいで・・・」

 

「なるほど・・・。」

 

「まさか、ラーサー様が来てくださるなんて思ってもみなかったわ。」

 

「あの傷の事はどう説明されたのですか?」

 

「ラーサー様が妖術師にでも来て貰ったのか?って、

 おっしゃったから、そのまま“はい”って答えちゃった。」

 

「そうですか。」

 

「・・・人間にも・・・あのような優しい方がいるのね・・・。」

ユウリは少しだけ哀しい表情を浮かべた。

 

「ユウリ様・・・。」

ユウリがここに住むようになった理由・・・

それを知っているジョルジュはユウリが言った言葉の意味が

痛いほどよくわかっていた・・・。

 



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