漆黒の翼 -6-
・・・ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ・・・
ドアを叩きつけるようにノックするけたたましい音に
ユウリの体は一瞬、ビクリとした。
「ユウリ、俺だ!ラーサーだっ!」
ドアの向こうで焦った様子の声がし、
ユウリはジョルジュと顔を見合わせ、慌ててドアの閂を外した。
「・・・ラーサー様?」
ユウリはドアを開け、明らかに穏やかではない表情で立っている
ラーサーを見上げた。
「ユウリ、頼みがあるんだ。」
「一体、どうされたのですか?」
いつもより早口で話し始めたラーサーの様子に
ユウリはただ事ではないと感じた。
「以前、君が足の傷を治してもらったという幻術師のところに
案内してくれないか?」
「・・・えっ?」
「仲間の騎士が敵の術にかかって・・・毒消し薬でも
治らないんだ・・・それで・・・君が以前、来て貰ったって言う
幻術師なら・・・」
「ま、待ってください・・・っ!・・・それは・・・」
「何か・・・不都合な事があるのか・・・?」
「・・・。」
「仲間の命がかかっているんだ・・・っ!」
「・・・。」
「ユウリ・・・ッ!」
「・・・。」
切羽詰った様子のラーサーをユウリは見上げたまま動けないでいた。
そして、ジョルジュもまた、そんなユウリを心配そうに見つめている。
ユウリはラーサーから視線を逸らすとギュっと目を瞑った。
「ユウリ・・・頼むっ・・・。
幻術師がいる場所を教えてくれないか・・・?
あれほどの傷が治せる幻術師ならきっと仲間を救える・・・っ。」
ラーサーは俯いたまま、目を閉じているユウリの顔を覗き込んだ。
“仲間の命がかかっている”
ユウリはその言葉が頭から離れないでいた。
「・・・なぜ、黙っているんだ・・・?」
「・・・。」
「幻術師は・・・どこにいるんだ?」
「・・・そ、それは・・・」
ユウリはラーサーと目を合わす事ができないでいた。
「・・・ユウリ・・・?」
ラーサーはユウリの様子を不審に思った。
「・・・。」
ユウリは無言で俯き、少しだけ震えている。
「ラーサー様・・・幻術師は・・・」
その様子を見かねたジョルジュが助け舟を出そうと口を開いた。
「・・・幻術師は・・・」
「連れて行ってください・・・っ!」
ジョルジュが続けて何かを言おうとしたその時、
ユウリがその言葉を遮った。
「私を・・・騎士団の皆様の所へ・・・連れて行ってください・・・。」
「ユウリ・・・?」
「ユウリ様・・・っ。・・・そんな事をしたら・・・っ。」
「・・・いいの。」
「ですが・・・」
「もしも、私の力で助ける事ができるなら・・・。」
「ユウリ様・・・。」
「ラーサー様・・・、私を連れて行ってください。」
ユウリはラーサーの目を真っ直ぐに見つめた。
「・・・わかった・・・。」
ラーサーはその真剣な表情に何かを感じ取り、頷いた。
「少し飛ばすから、しっかり掴まっていてくれ。」
ラーサーはユウリを馬に乗せ、手綱を引くと
洞窟に向かって馬を走らせ始めた。
その速度はとても速く、ユウリはぎゅっと目を閉じて
振り落とされないようにラーサーにしがみついた。
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