漆黒の翼 -7-

 

 

「こ、これは・・・っ!」

ユウリはつい先程まで戦闘が行われていた洞窟の前に来ると絶句した。

 

「そこに倒れている幻術師が術を唱えて、杖から黒っぽい光りが

 放たれたと思ったら・・・その光が前衛の俺達を包み込んでこうなったんだ・・・。」

ラーサーがそう説明するとユウリはすぐに倒れている騎士の一人に近づき、跪いた。

 

 

「・・・。」

やがてユウリは意を決したように立ち上がると

深呼吸をし、目を閉じた。

そしてユウリの体が薄っすらと光りに包まれ、

本来の姿へと変えていった。

 

「・・・っ!?」

ラーサーと他の騎士達は目の前で姿を変えたユウリを見て言葉を失っていた。

 

金色の髪は銀色へと変わり、深く碧い瞳は紅へ・・・

そして背中には漆黒の翼が現れたのだ。

有翼人の象徴であるその鳥のような翼は普通なら真っ白い翼だ。

しかし・・・ユウリの翼は黒い。

魔族との混血であるがゆえに翼の色が違うのだ。

 

「・・・ユウリ・・・君は・・・一体・・・?」

ラーサーが瞠目しているの目の前で、ユウリは

先端に碧いクリスタルが埋め込まれた杖に意識を集中させ始めた。

すると、クリスタルから優しい光りが放たれ、

倒れている騎士達を包み込んでいった。

先程まで苦痛に顔を歪め、血色を失っていた騎士達の顔色は

見る見る赤みををさしていった。

 

 

「・・・よかった・・・助かった・・・。」

ユウリは騎士達が回復していく様子に安心したのか、

ヘナヘナとその場に座り込み、そのまま気を失って倒れた。

 

「ユウリ・・・ッ!」

ラーサーはユウリに駆け寄り抱き起こした。

 

「ユウリ・・・ッ!ユウリッ!」

そして何度も名前を呼んだ。


「ラーサー様・・・大丈夫です。

 おそらく一気に魔力を使いすぎた所為で気を失っただけかと・・・。」

ジョルジュはあまり慌てる様子もなく、冷静に言った。

 

「ジョルジュ・・・ユウリは・・・」

 

「詳しいお話は後で・・・とにかく今はあまりユウリ様のお姿を

 他の方々にお見せしたくはないので・・・」

 

「・・・わかった。」

ラーサーはそう言うと自分が羽織っていたマントでユウリの体を隠し、

他の騎士達にも先に城へ戻るように言った。

 

 

ユウリの丸太小屋へ戻るとラーサーは静かにユウリをベッドへと運んだ。

 

「ユウリは・・・ただの有翼人では、ないな?」

 

「はい・・・その通りです。」

ラーサーの質問にジョルジュははっきりと答えた。

 

「あの黒い羽根は・・・」

 

「ユウリ様は有翼人と・・・魔族の混血なのです・・・。」

 

「・・・魔族の・・・?」

ラーサーは“魔族”という言葉に驚きを隠せないでいた。

 

「はい・・・ユウリ様のお母上が有翼人で、お父上が魔族の方でした。」

 

「・・・そうだったのか・・・。」

 

「ユウリ様御一家は以前はアントレア皇国の城下町に住んでおられました。」

 

「あぁ、その事はユウリから聞いた事がある。」

 

「ですが・・・ユウリ様が10歳になられた年・・・魔族が御一家を襲ったのです。」

 

「それは、なぜだ・・・?」

 

「わかりません。」

 

「わからない・・・?」

 

「はい・・・ただ、ユウリ様のお父上は魔族の中でも位の高いお方だったようです。」

 

「・・・では・・・暗殺・・・?」

 

「おそらく。」

 

「・・・そんなっ・・・」

 

「お父上はユウリ様とお母上を守るために、ご自分だけ家の中に残り、

 お二人を逃がしたのです。・・・ですが・・・お母上も・・・」

 

「殺されたのか・・・?」

 

「・・・はい、町から離れたところまで来た時に、私にユウリ様を託し、

 お父上のところへ・・・」

 

「・・・。」

 

「数日後、私がユウリ様を連れて戻ってみると・・・お父上もお母上も・・・」

 

「なんてことだ・・・。」

 

「そして・・・それまで魔力を使って隠していた本当の姿も周りの人間達に

 知られてしまい・・・」

 

「それで、こんな森の奥深くに移り住んだのか・・・。」

 

「はい・・・。」

 

「それじゃ、あの時・・・狼に襲われた時の傷もユウリが

 自分で治したのか?」

 

「はい。」

 

ジョルジュの話を聞き、ラーサーは深くため息をついた。

「ユウリに・・・申し訳ないことをした・・・。」

 

「ラーサー様・・・。」

 

「止む得ない事だったとはいえ・・・本当の姿なんて

 見られたくなかっただろうに・・・。」

ラーサーはベッドで眠っているユウリに視線を移した。

そしてその瞳はとても苦しそうに、辛そうにユウリの寝顔を見つめていた。

 

「今日の事は・・・国王様にはなんとご報告なさるおつもりですか・・・?」

 

「ランディール王には・・・そのまま報告しなければならない・・・。」

 

「それは・・・」

 

「しかし、大丈夫だ。国王様はユウリがどんな素性の娘であろうと、

 国外追放などといったことはしない。・・・むしろ・・・」

 

「・・・?」

ジョルジュはラーサーが何かを言いかけ、視線を外した事に首を捻った。

 

「・・・いや・・・なんでもない。」

ラーサーは一瞬、考えを巡らせた後、すぐに視線をジョルジュに戻した。

 



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