ブルースター −Epilogue−

 

 

「・・・先輩っ!?」

私は、いきなり先輩に引き寄せられて驚いた。

 

「ナル・・・あのさ・・・。」

 

「は、はい・・・?」

 

「これから、ナルと二人でやっていく前に・・・

 言っておきたいことがあるんだ。」

 

「はい・・・。」

 

せ、先輩・・・

 

もしかして・・・

 

関白宣言ーーーーーっ!?(by.さだまさし)

 

「俺達・・・今日、結婚したよな・・・?」

 

「はい。」

私と先輩の左の薬指には真新しい結婚指輪が光っている。

それがなによりの証拠。

 

「ナルは俺の奥さんになったワケだろ?」

 

「はい。」

そして、先輩は私の旦那様。

 

「そこでだ・・・。」

 

「はい。」

 

「・・・なにか・・・気が付かない・・・?」

 

「へ・・・?」

 

なにか・・・って・・・?

 

何・・・?

 

「いや・・・だから・・・。」

 

「なん、ですか・・・?」

 

「あの・・・ほら、俺とナルはもう夫婦なんだから・・・」

 

「はい。」

 

「その・・・自分の旦那さんの事を“先輩”って呼ぶのはおかしくね?」

 

「・・・あ。」

 

そういえば・・・確かにそれはおかしいかも・・・。

 

「いつになったら名前で呼んでくれるのかと思ってたら・・・」

「ご、ごめんなさい・・・つい・・・。」

「日高の事はあっさり名前で呼んでたのに・・・。」

「え・・・いや、だって・・・康成さんは

 大学の先輩とかじゃなかったからー・・・」

「じゃ、ナルの中では俺はまだ“大学の先輩”のままなの?」

「今はそれだけじゃないですよー?」

「でも、俺まだ一度もナルに名前で呼んでもらった事ないけど?」

先輩はちょっと拗ねた感じで口を尖らせながら言った。

 

「先輩・・・もしかして・・・結構、気にしてました?」

 

「うん・・・まぁ・・・。」

 

「ご、ごめんなさい・・・。」

 

「まぁ、付き合い始めた時に言わなかった俺も俺なんだけど・・・。」

 

「いえ・・・私も付き合い始めた時に名前で呼んだほうがいいのかなと

 思ったんですけど・・・なんか恥ずかしくて・・・タイミングを

 失っちゃって・・・ご、ごめんなさい・・・。」

 

「じゃあ・・・これからは名前で呼んでね?」

 

「はい。」

 

 

それから・・・私が先輩の事をすんなりと“優二さん”と

呼べるようになったのは約一ヶ月後の事だった・・・。

 

 

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