Calling 第13話 交換 -1-

 

 

「イズミ、学食行くの?」

翌日、週明けの月曜日。

昼休憩、弁当を食べ終わって学食にコーヒー牛乳でも買いに行こうと席を立った俺に

織田ちゃんが声を掛けてきた。

 

「うん。もしかして、ついでに何か買って来い?」

 

「ううん。じゃなくて、昨日応援に来てくれたからお礼に

 コーヒー牛乳でもどうかなー? って」

 

「お、マジで? でも、俺、結局おまえの試合見れなかったけど」

 

「あはは、そうだけど、わざわざ来てくれたしね」

 

 

……という訳で、俺と織田ちゃんは学食にやって来た。

 

自販機の前には男子と女子のカップルがいた。

上履きの色からして二人とも一年生みたいだ。

 

「鈴ちゃん♪」

すると、織田ちゃんがその女子の肩を軽くトントンと後ろから叩いた。

 

(えっ?)

 

「あ、織田先輩、和泉沢先輩、こんにちはー」

女の子が振り返り、俺と織田ちゃんの姿を認めるとニコッと笑った。

 

(小峯っ!?)

俺はいつもポニーテールにしている小峯しか知らない。

しかし、今は髪をおろしていた。

(……全然気が付かなかった)

 

「ちわっす」

男子の方はあの岩井とかいう奴だった。

 

(またこいつと一緒かよ……)

 

「イズミ、好きなの押してー」

俺がムッとしていると、織田ちゃんはチャリン、チャリンと自販機に

小銭を入れながら振り返った。

 

「サンキュー」

ポチッと【コーヒー牛乳】のボタンを押し、自販機の中に手を突っ込んだ。

すると、ガラコンッと音を立てて出てきたのは何故か“牛乳”だった。

 

「あれっ?」

「イズミ、どうしたの?」

「コーヒー牛乳のボタン押したのに牛乳が出てきた」

「押し間違えたんじゃないの?」

「いや、確かにコーヒー牛乳のボタン押したって」

「「んー?」」

そして、織田ちゃんと二人で首を捻っていると、今度は隣の自販機の前にいた小峯が

「あれぇー?」と言った。

 

「どうしたの?」

「牛乳のボタン押したのにコーヒー牛乳が出てきた」

「押し間違えたとか」

「ううん、確かに牛乳のボタン押したんだけど……」

「「……?」」

小峯と岩井は俺達と同じ様に顔を見合わせて首を捻っていた。

 

どうやら自販機の業者がコーヒー牛乳と牛乳を入れ間違えたようだ。

 

「小峯、牛乳がよかったの?」

 

「はい。和泉沢先輩はコーヒー牛乳ですか?」

 

「うん」

 

「「……」」

俺と小峯はしばしの間見つめ合い、ニッと笑った。

どうやらお互い同じ事を考えたようだ。

 

「「はい♪」」

俺が差し出した牛乳を小峯が受け取り、小峯が差し出したコーヒー牛乳を俺が受け取った。

利害一致で交換終了。

 

「俺、牛乳嫌いだから助かったー」

 

「えっ、そうなんですか?」

 

「うん、コーヒー牛乳は好きだけど牛乳は無理」

 

「それなのにそんなに背が高くなったんですか?」

小峯はそう言うと俺を見上げた。

俺の身長は183cm。

150cmくらいしかない小峯とは約30cmの身長差がある。

 

「私なんて毎日牛乳飲んでもこれなのに……」

小峯は恨めしそうな顔で俺を見つめた。

 

「でも、これから伸びると思うよ? まだ高一なんだし」

そう言って小峯に優しい笑みを向けて慰めたのは横で話を聞いていた岩井だった。

 

(出たー、“慰め役”)

 

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