Calling 第16話 存在 -1-

 

 

「ねぇ、イズミ、昨日鈴ちゃんと一緒に帰らなかった?」

翌日、朝一で織田ちゃんに訊かれた。

 

「あ?」

 

「駅で見かけた」

 

「あー……」

どうやら織田ちゃんは昨日、俺と小峯があの兄さん達から逃げた後、

一緒に帰っているところを目撃したようだ。

 

「あれは、小峯がなんかヘンな勧誘に捕まっててさ、ちょっと助けただけ」

 

「それって、『カットモデルになりませんか?』ってやつ?」

 

「そそ。てか、織田ちゃんも捕まったんだ?」

 

「うん、まぁ。あたしはそんなの完全無視して通り過ぎたけど、鈴ちゃん捕まってたの?」

 

「あぁ、例によって“嫌”って言えなかったみたいでさ、男二人の鴨にされてた」

 

「うっわー」

 

「そんなワケで俺が“ヒーロー”の如く、助けに入ったってワケ」

 

「ヒーローねぇー」

織田ちゃんはクスクスと笑った。

そして少しの間を空けて「……イズミ、鈴ちゃんの事、どう思ってる?」と訊いてきた。

 

「どうって……」

俺にとって小峯はもう“ただの後輩”とは言い切れない存在になっている。

でも、それを口にするわけにはいかない。

もし、その事が織田ちゃんからシゲに伝わって耳に入ったらややこしい事になる。

 

「好き?」

織田ちゃんはズイッと顔を近づけて、やや小声で言った。

 

「え!?」

びっくりした。

(突然、何を訊く?)

 

「ねぇ、どうなの?」

 

「……」

(だから……そんな事言えるわけねぇだろっ)

俺は何も答えず黙っていた。

 

「じゃあ、質問変える。イズミはなんで鈴ちゃんと同じ中学だった事を覚えてたの?」

すると、今度はさっきと違って遠回しな感じの質問をしてきた。

 

「なんでってー……、中学の時もテニスコートに飛んで行ったサッカーボールを取りに行ってたし……」

 

「ふーん……そっか」

織田ちゃんはそう言うと前を向き、頬杖をついて黙り込んだ。

 

一体、何が聞きたかったんだ?

そういえば、シゲがこの間、“女の勘”がどうとか言っていた気がする。

今の質問と何か関係があるのかな?

いや、だとしても俺が小峰の事を好きだという素振りは見せていないはずだ。

 

……多分――。

 

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