Calling 第29話 お兄さんと中国少女 -1-
「ところで、鈴のクラスは模擬店何やんの?」
「『肉まん屋さん』です」
「へー、普通だな」
最近はメイド喫茶だのなんだのと流行っているから、
てっきり鈴のクラスもその類の事をやるんだと思っていた。
実際、俺達のクラスは“そっち系”だし。
だから『肉まん屋さん』と聞いた時はちょっとホッとした。
「でも、衣装が……」
しかし、鈴は顔を引き攣らせていた。
「制服じゃないのか?」
「はい」
「何着るの?」
「チャイナドレスです」
「えっ!?」
(それはラッキー♪)
驚いたけど、正直ちょっと、いや、かなり嬉しかった。
だってこんな企画でもない限り、鈴のチャイナドレス姿なんてそう見る機会なんてない。
他の奴らにも拝ませる事になるけれど、それはまぁこの際我慢しよう。
(提案した奴、Good Job!)
「先輩のクラスは何やるんですか?」
「俺らンとこは『お兄、お姉喫茶』」
「何ですか? それ」
「まぁ、よーするにメイド喫茶の“お兄さん、お姉さん版”、男子はお兄さんキャラ、
女子はお姉さんキャラをやるわけ。しかも、ちゃんと“ツンデレ”とか
“ひたすらクール”とか“萌え系”とかキャラ設定まであるんだ」
「ほぇー、先輩はどんなキャラなんですか?」
「俺は“フツーのお兄さん”、ツンデレとかクールは無理だからなー」
「よかったー、先輩のクラスに遊びに行った時、いきなりクールなキャラだったら
どうしようかと思いました」
鈴はそう言うと、あははっと笑った。
◆ ◆ ◆
――学園祭初日。
鈴のクラスの模擬店『肉まん買っチャイナ』には開店早々行列が出来ていた。
「つーか、『肉まん買っチャイナ』って……」
「ある意味すごいネーミングだな」
「まぁ……いいんじゃない?」
そして俺とシゲ、織田ちゃんの三人もその行列の中にいた。
鈴のチャイナドレス姿を拝みに来たのだ。
「いらっしゃいま……先輩っ!?」
俺達がイートインコーナーに座ると一人の女の子がオーダーを取りに来た。
「あー、鈴ちゃん」
「「……え?」」
織田ちゃんがその女の子を“鈴ちゃん”と呼んだのを聞いた俺とシゲは顔を見合わせた後、
改めて女の子の顔を見た。
(鈴?)
目の前に立っている女の子は、両サイドの髪を少し残して左右それぞれおだんごにした
可愛らしい中国っぽい髪型に赤いミニのチャイナドレスを着ていた。
しかも衣装に合わせてメイクもしている。
(か、可愛い……)
いつもと全然違う鈴の姿に俺もシゲもすぐに彼女だとはわからなかった。