Calling 第30話 ご褒美 -2-

 

 

――学園祭から数日後、

「鈴、今週末も試合あるの?」

部活が終わって和泉沢先輩と帰っている時、そう訊かれた。

 

「いえ、今週はないです。先輩は?」

 

「俺等は最後の試合があるかなー」

 

「それってー……引退試合って事ですか?」

 

「うん」

 

とうとう、この日が来てしまった。

 

引退試合が終わったら先輩達三年生の部員は受験体勢に入るから部活には出なくなってしまう。

そして、それは私と先輩がこうして一緒に帰る事も出来なくなる事を意味していた。

 

「……じゃあ、応援に行きますね」

それでも私はなるべく平気な顔をした。

 

「うん」

 

(先輩は平気なのかな?)

普通に返事をした先輩の横顔をちらっと見てみた。

 

「ん?」

その視線に気がついた先輩はどうしたんだ? という顔を私に向けた。

 

「あ……えと、試合、どこであるんですか?」

私は慌ててなんでもない顔を作った。

 

「この間、織田ちゃんと一緒に応援に来てくれた時と同じスタジアムだよ。

 それでさー……鈴にお願いがあるんだけど……」

 

「?」

(お願い?)

 

「今度の試合に勝って、もし、俺等がベスト8以内に入れたらさ、ご褒美欲しいな〜?

 なーんて……」

 

「……へ?」

(ご褒美?)

 

「鈴が作ったお弁当食べたいな♪」

 

先輩の“おねだり”は意外な物だった。

“ご褒美”と言うからには何かもっと大そうな事を言うのかと思っていた。

 

しかし、問題が一つだけある。

 

「え……で、でも私、お弁当なんて作った事ないですよ……?」

私はお弁当を作ったことがない。

別に料理が出来ないわけじゃないけれど、いざ“お弁当”となると、

どんなおかずを詰めればいいのかが浮かばない。

 

「あ、中身は玉子焼きさえ入ってれば他は何でもいいから♪」

先輩はそう言うとニッと笑った。

どうやら玉子焼きが好きらしい。

 

「わかりました。じゃあ、頑張って作りますっ」

 

「やった♪」

先輩は子供みたいに喜んで小さくガッツポーズをした。

 

(……可愛い)

 

「何? なんで笑ってんの?」

思わず吹き出した私に先輩が不思議そうに言った。

 

「なんでもないですー」

「えー、そんなワケないだろ?」

「あははっ」

「ホラ、まだ笑ってるしー、言えー、何で笑ってんだー?」

「ホントになんでもないですってばー」

 

その後、先輩は駅に着くまでずっと私に絡みながら訊いていたのは言うまでもない――。

 

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