Calling 第32話 サイン -3-

 

 

二番ゲートと三番ゲートの間に視線をやると、すぐに鈴の姿を見つける事が出来た。

淡いブルーのカットソー、隣には新井らしき人物がいる。

顔の表情まではわからないけれど、あれは絶対、鈴だ。

 

(これが、高校最後の試合になるかもしれない……)

 

目標はもちろん“優勝”。

今日の試合に勝てばベスト8に入るし、来週も試合があるから引退がちょっとだけ延びる。

そうすれば鈴からの“ご褒美”もゲット出来るし、あと一週間だけ一緒に帰れる。

 

(頑張らないとっ)

 

 

     ◆  ◆  ◆

 

 

そして、キックオフ――。

主審のホイッスルの音がスタジアムに鳴り響き、試合が始まった。

 

スタメンの俺とシゲにはさっそくぴったりとマークが貼り付いた。

 

(うぜぇー)

 

相手チームはかなり俺達の事を研究しているらしい。

しかし、俺達も当然相手チームの事は研究している。

今日の相手は力量としては五分五分のチーム。

ただ、俺達と違うのは対戦するチームの事を徹底的に研究して緻密な作戦を立ててくる事。

一昨年はそれでベスト4にまでなった高校だ。

 

まぁ……逆を言えばこっちが今までと違う動きをすれば作戦が崩れるわけだけど。

いつもなら俺達はフォワードに入っている。

しかし、今日は相手チームの裏をかく為にミッドフィールダーに入っていた。

それでも相変わらずマークはされているけれど……。

だから、俺もシゲもシュートよりもパスを回す事に専念していた。

シュートすると見せかけてパスを出したり、パスが回ってきてもすぐに他のメンバーに

パスを回したり――。

 

全てのシュートを他の奴に任せるが、なかなかゴールが決まらずもどかしかった。

小川先生からは「前半はパス回しに専念して様子を見ろ」と指示が出されているから、

シュートを打つ体勢も取れない。

だから自分で打ちたいのもあるが、何よりマークがうざすぎてパスを受けて回すのが精一杯だった。

 

(くっそ……っ)

心の中で呟く。

 

「大地」

すると、シゲが俺の肩を軽く叩いた。

気が付くと俺は眉間に皺を寄せて唇を噛み締めていた。

 

「悪い」

(イラ立ってるのが顔に出てたのか……)

俺は一度大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせた――。

 

HOME
INDEX
BACK
NEXT