キューピッド・ゴブリン −18−

 

 

「レイア、今日も来なかったなー」

夜11時半、いつものようにゲームからログアウトし、

俺はここ一週間、ずっとログインしていない

レイアの事が気になっていた。

 

そして俺にはもう一つ気になっている事があった。

 

それは成瀬さんの事だ。

 

最近、彼女の様子がおかしい。

元々大人しい方だけどここ数日、輪をかけて大人しかった。

 

 

 

 

――翌日。

 

今日は俺が日直の日だった。

女子の日直は成瀬さんと仲の良い徳永さんだ。

 

「成瀬さんとケンカでもしたの?」

1時限目が終わった休憩時間、成瀬さんの事が気になっていた俺は

徳永さんと並んで黒板の文字を消しながらそれとなく聞いてみた。

 

「ううん、してない。なんで?」

 

「……いや、別に深い意味はないんだけど、

 成瀬さん最近、徳永さん達ともあんまり

 しゃべってないみたいだから」

 

(それなら体調でも悪いのかな?)

 

「なんかねー、ちょっとショックな事があったみたい」

 

「ショックな事?」

 

「うん、沙耶はね、あぁ見えて実はゲーム好きなんだけど

 今やってるゲームでなんか大事にしてたアイテムを

 失くしちゃったとか言ってたよ」

 

(ゲーム? あの成瀬さんが?)

 

「私はゲームとかやらないから、それがどういう物なのか

 わかんないんだけど、仲の良い男の子から貰ったものだって言ってた」

 

「それってオンラインゲーム?」

 

「うん、そうみたい」

 

「成瀬さんがねぇ……」

 

「沙耶、ゲームなら相手の顔が見えないから、

 そんなに緊張せずに話せるんだって」

 

「あー、なるほどね」

 

(てか、“仲の良い男の子から貰ったもの”で、

 失くしてショックな物って……)

 

(もしかして……指輪とか?)

 

「そのアイテムってもう手に入らない物なの?」

 

「ううん、そんな事はないって言ってたけど、

 すごく時間をかけて一生懸命作ってくれたものだから、

 それを失くしたのがショックなんだって」

 

(それは確かにショックだな)

 

「それでね、失くしたことをその男の子に言い出す勇気がなくって、

 どうしようか悩んでるみたい」

 

(それで最近ずっと元気がなかったのか……)

 

成瀬さんが元気がない理由は俺の予想していたのとはかなり違っていた。

まさか、あの成瀬さんがオンラインゲームなんてやっているとは

思っても見なかった。

 

それに“仲の良い男の子”がいるなんて……

 

(どんな奴なんだろ?)

 

 

黒板を消し終わって、自分の席に戻る途中、

成瀬さんをちらりと横目で見てみた。

 

思い詰めた顔をしている。

 

成瀬さんがなくしたアイテムって、

そんなに大切なものだったのかな――?

 

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